抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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凍結保存中の食品内部の氷結晶は,時間経過とともに周囲の水分子を取り込んで成長と粗大化を繰り返し,そのサイズが際限なく大きくなる。これを,再結晶化と呼ぶ。この現象が進行することで,食品の組織が破壊され,品質低下が生じる。氷結晶の再結晶化を効果的に抑制する物質として,不凍タンパク質(Antifreeze protein;以下AFPと略記)が近年注目されている。AFPは寒冷地に生息している特定の生物に含まれるタンパク質である。AFPは氷結晶表面に結合し,再結晶化を強く抑制する。AFPを食品に添加することで,再結晶化が抑制され,長期間にわたって品質保持が可能な凍結保存技術が実現できると期待されている。多くの冷凍食品では味付けや,保存性向上のため,塩が添加されている。本研究ではAFPの氷結晶の再結晶化抑制挙動に及ぼす塩添加の影響を明らかにすることを目的とした。40%スクロースに所定の濃度のAFPを含む溶液をAFP含有モデル食品とし,ここに濃度3%となるよう塩を添加した。そして,2μLを2枚の直径16mmの円形カバーグラスの間に挟み込み,温度制御装置付き光学顕微鏡にセットし,-10°Cにおける氷結晶の再結晶化挙動を観察し,顕微鏡デジタルカメラで氷結晶画像を撮影した。撮影した画像から画像解析により,氷結晶の平均半径を求め,その時間依存性をオストワルド式で解析することで,再結晶化の進行の速さを反映した再結晶化速度定数を求めた。AFPは,AFP type I,AFGP,AFP type IIIの3種について検討を行った。AFPが含まれていないとき,3%の塩添加により,再結晶化速度定数は3.4倍となった。このことは,塩添加により再結晶化の進行が促進されたことを意味している。また,塩が含まれていないとき,10mg/mL AFP type I,20mg/mL AFP type III,0.1mg/mL AFGPの条件で,再結晶化速度定数はAFP無添加試料と比べて,それぞれ83%減,84%減,88%減となった。3%塩を加えても,上記のAFPの種類,濃度条件で氷結晶の再結晶化は効果的に抑制され,塩が含まれていないAFP含有試料より再結晶化速度定数は小さな値となった。このことは,3%塩の添加でも上記のAFPの再結晶化抑制能は失われず,むしろ向上することを示しているものと考えられた。(著者抄録)