抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
本稿では,南天を代表する近傍銀河であるCircinus銀河中に知られる周波数183及び321GHz(ギガヘルツ)帯で放射されるサブミリ波水蒸気メーザーを,ALMA(アタカマミリ波・サブミリ波干渉計)の高空間分解能で観測したデータの初期解析結果を報告する。解析の結果,321GHzの水分子輝線スペクトルは,銀河系統速度に関してほぼ対称に速度がドップラー偏移した速度成分(高速度成分)の存在を明瞭に示している。183及び321GHzメーザーのフラックス強度は,22GHz水メーザーより有意に弱いが,メーザー放射が見える速度範囲はほぼ一致しているので,銀河中の同じ領域から放射されていることを示唆している。183GHzメーザー源の分布は南側にやや分解されたコンポーネントが見えている。一方,321GHzメーザーはコンパクトで,0.03秒(約0.6パーセクに相当)の空間分解能では完全には分解されていなが,速度構造は見えており,回転円盤の存在を示唆している。183GHz水メーザーの速度構造を調べたところ,約0.045秒の分解能で速度勾配が検出された。銀河の中心にある巨大ブラックホールを中心とした回転運動を仮定すると,速度勾配及びメーザースペクトルから計算した回転半径・速度から中心のダイナミカル質量を計算すると,太陽質量の約10
8乗倍と算出された。これはCOなどの分子ガスから求めた半径100pc以内の銀河円盤のガス質量に比べて1桁以上大きく,過大な値である。今後,より高い空間分解能でメーザー源の分布を分解することにより,さらに正確な中心質量(の上限値)を求めることが可能になるといえる。速度勾配の方向は,22GHz帯のVLBIのミリ秒角空間分解能でイメージングされたサブパーセクスケールのメーザー円盤の方向と大局的には同じ方向である。これは最近発表された0.3”の低い空間分解能で321GHz帯の水メーザーで得た速度勾配の方向とも一致している。321GHzのメーザーは光学的に薄く,円盤のより内側,つまり中心エンジンに近い部分をトレースしている可能性があるといえる。以上は,より高い空間分解能でのALMAなどによる観測で,今後さらに明らかにされていくであろう。(著者抄録)