抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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スゲ属ヌカスゲ節Carex sect.Mitratae(カヤツリグサ科)の新種ナガボクサスゲCarex tokuii J.Oda&Nagam.を記載した。本種は白緑色の花頴,無毛の果胞をもち,特に痩果の3面が中央部で凹むことでクサスゲC.rugata Ohwiときわめて類似しているが,多くの量的形質において相違が認められる。地理的,形態的変異を考慮して選んだナガボクサスゲ17個体,クサスゲ30個体を調べたところ,雌花頴の長さ,雌花穂の数,最下苞葉の葉身部の長さ,最下雌花穂の茎の高さに対する相対的位置,雌花穂の長さなど9形質について有意に異なり,ナガボクサスゲとクサスゲは別種であると判断された。痩果の柄がほぼ真っ直ぐである(クサスゲではほぼ直角に曲がる),痩果表面のケイ酸体の中央体がよく発達している(クサスゲでは発達が悪く,時に見えない)点など痩果の形態における質的な相違も重要な判別形質である。また,生育環境についても,ナガボクサスゲはクサスゲよりは湿り気の少ない場所で生育している場合が多く,根茎も叢生し,クサスゲのようにマット状に広がることは無いなどの相違点が見られる。日本では四国(愛媛県南西端),九州(長崎県・対馬,鹿児島県・桜島),韓国では南部の光州市や全羅南道での分布が明らかになった。ナガボクサスゲは愛媛県の故得居修氏によって発見され,その後の研究を我々が引き継いだものである。韓国では最近多くのクサスゲの産地が報告されているが,それらもナガボクサスゲであるかどうかについて今後の解明が望まれる。(著者抄録)