抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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カワラケツメイ属Chamaecrista mimosoides(L.)Greeneは東アジアからアフリカまで分布し,葉は比較的小型の小葉をつける偶数羽状複葉で,約80対にまで達する多数の小葉対からなる。さらに,葉軸の小葉対と小葉対の間の向軸側に特異な半円形の円鋸歯型隆起をもつことで,近縁種から識別されてきた。カワラケツメイ属植物の葉軸は,一般に,小葉対と小葉対の間の向軸側に2列の畝状の隆起があり,中央には溝ができる。C.mimosoidesにみられる円鋸歯型葉軸はたいへん希な特徴であるが,溝型葉軸との構造的な関連について詳細は知られていない。本研究では,C.mimosoidesと同じSect.Chamaecristaに属し,一般的な溝型葉軸をもち,かつては同一種として扱われることもあったカワラケツメイC.nomame(Makino)H.Ohashiと解剖学的および発生学的に比較することで,両者の構造的な関連を明らかにすることを目的とした。Chamaecriata mimosoidesの円鋸歯型隆起は葉緑体を多く含む単一の柔組織からできており,C.nomameの溝型葉軸の2列の隆起はそれぞれ独立した柔組織からできている。両者は発生過程初期から異なっており,前者では単一の隆起が,一方後者では2つの隆起が生じた。どちらも葉柄の中央脈から向軸側の隆起に2本の稜維管束(ridge bundle)が供給される。しかし,円鋸歯型葉軸では小葉の付着点の直後に1本に融合し,次の小葉付着点までの中央付近で,再度2本に分岐し,次の小葉付着点を過ぎると再度一本に融合する。溝型葉軸では,葉軸中で稜維管束は2本のままである。また,円鋸歯型葉軸では,融合した稜維管束から隆起に向かって分枝する1本の小さな維管束が確認された。葉柄の先端部にはどちらも花外蜜腺を1個もつが,C.mimosoidesでは稜維管束から花外蜜腺に,C.nomameでは中央維管束の両端から,いずれも主に篩部からなる維管束が供給される。本研究の結果は,これまで同一種とする見解もあったC.mimosoidesとC.nomameを区別する新規の形質を明らかにした。また,円鋸歯型葉軸の2本の稜維管束が小葉付着点間で融合と分岐を繰り返す走向パターンは,円鋸歯型葉軸が溝型葉軸の2列の畝が合着してできたとするLock(2007)の考えを支持した。さらに,円鋸歯型隆起を構成する柔組織に多数の葉緑体が含まれ,表皮に多数の気孔が観察されることから,円鋸歯型葉軸は葉の光合成能力の向上に係わっていることが示唆された。(著者抄録)