抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本研究では,米国アラスカ州バローの降水の同位体変動を水蒸気発生源領域,輸送経路沿い,降水サイトの条件と関連付けた。2009年1月~2013年3月の間の70の降水イベントをδ<sup>2</sup>Hと重水素過剰について解析した。それぞれの降水イベントついて,水蒸気発生源領域をバックキャストモードの流跡線(HYSPLIT)気塊追跡プログラムで特定した。結果は,冬(夏)に,大部分が遠い(近い),南(北)の水蒸気発生源領域で生じ,周年で移動することを示した。これは,極循環セルの赤道方向への拡大と極方向への収縮,そして北極海氷の拡がりに関連すると考えられた。水蒸気発生源領域緯度と降水中のδ<sup>2</sup>Hの周年サイクルは相が一致し,低(高)δ<sup>2</sup>Hは,冬(夏)と遠い(近い)水蒸気発生源領域と関連した。降水量δ<sup>2</sup>Hは,δ<sup>2</sup>Hと次の3つのパラメータのはっきりとした相関により,水蒸気発生源領域の変動に対応した。(1)バローでの持ち上げ凝結高度(LCL)と降水雲の間での総冷却,Δ<span style=text-decoration:overline>T</span><sub>cool</sub>,(2)2m露点で定量化した蒸発サイトでの気象条件<span style=text-decoration:overline>T</span><sub>d</sub>,(3)Boolean変数,mtnとして表現した水蒸気経路がブルックス山脈及び/あるいはアラスカ山脈を横切ったかどうか。これらの3つの変数が,降水のδ<sup>2</sup>H変動の54%を説明し(p<0.001),感度はΔ<span style=text-decoration:overline>T</span><sub>cool</sub>に対し-3.51±0.55‰ °C<sup>-1</sup>(p<0.001),<span style=text-decoration:overline>T</span><sub>d</sub>に対し-3.23±0.83‰ °C<sup>-1</sup>(p<0.001),mtmが真の時-32.11±11.04‰(p=0.0049)低下であった。同位体組成に対するそれぞれの影響強度も,水蒸気発生源領域への近接度で変化した。水蒸気発生源領域近くのストームでは(Δ<span style=text-decoration:overline>T</span><sub>cool</sub><7°C),Δ<span style=text-decoration:overline>T</span><sub>cool</sub>は,δ<sup>2</sup>Hの分散の3%を説明し,<span style=text-decoration:overline>T</span><sub>d</sub>だけで43%を占めたが,mtnは2%を説明した。水蒸気発生源から遠いストームでは(Δ<span style=text-decoration:overline>T</span><sub>cool</sub>>7°C),Δ<span style=text-decoration:overline>T</span><sub>cool</sub>は22%を説明し,<span style=text-decoration:overline>T</span><sub>d</sub>はわずか1%のみを説明し,mtnは18%を説明した。重水素過剰の年間サイクルは,δ<sup>2</sup>Hサイクルの2~3か月遅れで,2つの変数間の直接的な相関は弱かった。海面水温に対する水蒸気発生源領域相対湿度<span style=text-decoration:overline>T</span><sub>hss</sub>は,重水素過剰の分散の34%を説明した(-0.395±0.067‰ %<sup>-1</sup>,p<0.001)。著者等のデータのパターンは,年スケールでバローの降水の同位体比が,氷床コアのような長期の気候変動記録の解釈に適用可能な関係となる,極循環セルの南への拡がりの変化に対応すると考えられた。(翻訳著者抄録)