従来の電気化学的手法は,電流経路を確保することが困難なため,大気腐食への適用は困難とされてきた.近年,大気環境下での腐食モニタリングにおいて,その問題を克服するために多くのセンサや測定方法が提案されている.本レビューでは,著者らによって開発されたACM(Atmospheric Corrosion Monitor)センサを含む,大気環境の腐食性をモニタリングし評価するための手法や技術を紹介する.ACMセンサについては,センサ出力(I)の大きさと経時変化を解析することによって,結露・乾燥・降雨の各期間の検出およびそれらの時間(Train, Tdew, Tdry,)を測定ができることを示した.また,予め求めておいたI-RH校正曲線を用いて,海塩付着量(Ws)を推定できることも示した.それら環境因子(RH, Ws, Train, Tdew, Tdryなど)の炭素鋼,亜鉛めっき鋼板およびステンレス鋼の腐食挙動におよぼす影響について述べた.さらに,それらの環境因子とACMセンサ出力とから,炭素鋼の腐食速度を推定する式を提案した.
水素脆化に影響を与える鋼中水素量は鋼材の腐食量の影響を受けると考えられる.筆者らは埋雪深さと腐食量の関係を明らかにしている.今回は水素量について検討した結果,腐食量との相関は認められなかった.この理由として主なカソード反応は溶存酸素の還元反応であり水素発生はわずかなこと,周囲の多量の水が反応面のpH低下を抑制することから,H+の形成,電子の授受によるHad~Habに至る反応が少ないことが示唆された.
放射線照射下でのSCCき裂内の放射線分解水質における溶存酸素濃度の寄与とき裂深さ方向の水質分布の評価のため,隙間付与ステンレス鋼のガンマ線照射下試験とラジオリシス解析を実施した.その結果,溶存酸素濃度によらず隙間内全域にFe2O3が形成されることを確認した.また,照射下では,き裂内でラジオリシスにより直接生成された酸化剤種は被膜成長で消費され,放射線環境下でもき裂先端部で溶出金属の加水分解とアニオン濃縮によるpH低下が発生することが推定された.