2023年4月より,福岡工業大学並びに福岡工業大学短期大学部の学長に就任いたしました。このたび長い歴史と伝統を誇る電気学会誌への寄稿の機会をいただき,大変恐縮し身が引き締まる思いです。
さて何を書かせていただこうかと考えた時,人と抜きん
1.組織チップの概要と進歩
組織チップ(Organ(s) on a Chip)は,生物医工学の最前線に立つ革新的な技術であり,ヒトの臓器機能を微細なスケールで模倣することを目的としている(1)。組織チップは,細胞を特殊なポリマーやガラス製のマイクロ流体チャネルに配置し,生物学的および物理学的環境を制御するこ
1.はじめに
かつて,人間を対象とした薬物試験を行う前には,その薬物と試験の安全性を確認するための動物実験を行うことが求められていた。アメリカではすでに1930年代に人体実験の代替として動物実験を義務づける連邦命令が成立していた。しかし,2022年12月,バイデンアメリカ大統領
1.はじめに
次世代シーケンサー,質量分析の発展により,代謝解析によるがんに特異的な薬剤開発が期待されている。従来,がん細胞の代謝活動の定量解析には,組織からのがん細胞の単離が必要であった。これは,生体内のがん細胞の周囲には,がん微小環境と呼ばれる間質細胞(繊維芽細胞,血
1.ボディー・オン・チップ
ボディー・オン・チップ(BoC)は,生体外で組織や生体機能を再現する技術であり,Organ-on-a-Chip(OoC)やMicrophysiological systems(MPS)とも称される。この技術は複数の組織間の相互作用を模倣し,評価することによって,従来の細胞培養や動物実験では捉えきれなかっ
1.はじめに
マイクロ流体デバイス技術とヒト由来細胞を使って,ヒトの臓器レベルの構造や機能を再現する組織チップ(Organs on a Chip:OoC)が,新しい創薬スクリーニング手法の一つとして注目を集めている。従来の細胞培養ディッシュ(シャーレ)を使用した細胞培養法と比較して,OoC
1.はじめに
幹細胞やゲノム編集技術の目覚ましい発展に伴い,従来の動物実験に代わる細胞培養システムが提案されている。例えばスフェロイドやオルガノイドなどの3次元培養,微細加工技術を駆使した潅流によるorgans-on-a-chipなどが進歩し,これらの基礎研究および産業利用が報告され
1.はじめに
Organs-on-a-chipは,小さなチップの上で動物細胞の培養を可能とするシステムである。培地を灌流することにより,複数のコンパートメントを結合して臓器内や臓器間の相互作用の再現に対応するなど,従来のシャーレやウェルプレートによる培養とは全く異なる培養環境を実現
1.はじめに
電気絶縁は,高電圧から低電圧までのあらゆる電気電子機器やデバイスにおいて必須となる。電圧が印加される導体は,必ず固体誘電体(絶縁体)で支えなければならない。高電圧を印加した場合,もしくは低電圧でも電極間隔が極めて短くなった場合において,電気絶縁で最も問題と
1.はじめに:量子コンピュータ?
現代社会はさまざまな場面でコンピュータの利便性を享受している。この利便性はコンピュータの計算能力に支えられ,計算能力は大規模集積回路(LSI)技術の進展に依存する。LSIの半導体微細加工に基づく集積度の進歩はMooreの法則(1)という経験則に従うとされるが,ミクロな
1.はじめに
アグリゲーターとは,ざっくり説明すると,小規模な電源リソースを束ねて(アグリゲートして)電力取引を代行する者を指します。私が所属する企業のグループ会社においてもアグリゲーターライセンスを取得し私もその事業に関わっておりますが,社内外問わずアグリゲーターって
1.はじめに
電気学会では1991年の組織体制の刷新以来,電気学術に関する全分野が五つの専門領域に分けられ,それぞれが特色のある「部門」として規定されている(1)。現在の部門の体制は以下に示すとおりである。
◆基礎・材料・共通(A部門)
JEC-2220-2007負荷時タップ切換装置は2007年に制定されて以降,負荷時タップ切換装置の共通規格として運用が始まり,約15年経過した。その間,タップ切換装置のIEC規格IEC 60214-1:2014 Tap-changers-Part1:Performance requirements and test methods及び,タッ