【目的】
幼少期に肝移植を受けたレシピエントは成長や発達するにしたがって、服薬や受診、日常生活の管理行動などを親管理から自己管理へと移行する。この移行の時期はレシピエントの思春期にあたることが多く、思春期のレシピエントでは服薬ノンアドヒアランスや未受診の発生率の高さが指摘されている。そのため、本研究では小児肝移植レシピエントの自己管理に関する尺度を概観し、それらをもとに看護師が親管理から小児肝移植レシピエントの自己管理へと移行する状態の判断に有用な尺度を検討する。
【方法】
医中誌、PubMed、CINAHL、MEDLINEでキーワードを「小児」「肝移植」「自己管理」「Child」「Liver Transplantation」「Self-Management」「Self Care」とし、2010年1月1日~2023年6月30日までの期間で検索し、7つの文献が分析対象となった。
【結果】
分析対象の文献で用いられていた尺度は、責任の割り当て(Allocation of Responsibility)、責任と病気の理解度調査(the Responsibility and Familiarity with Illness Survey)、 発達による健康マネジメント能力チェックリスト(Developmentally Based Healthcare Management Skills Checklist)、健康能力チェックリストツール(the Healthcare Skills Checklist Tool)、包括的アセスメント測定 (Global Assessment Measure)、移行準備調査:思春期・若年成人期版(Transition Readiness Survey: Adolescent/Young Adult Version)であった。しかし、これらの尺度は必要な健康管理を親管理からレシピエントの自己管理に移行できる状態か否かを判断するために用いられていなかった。また、分析対象の文献は全て国外文献であり、小児医療から成人医療への移行の中で親管理から自己管理への移行が捉えられていた。そのため、医療体制の移行について検討されることの少ない日本国内の現状にはそぐわない内容であった。
【結論】
今後は日本の医療体制を踏まえて、看護師が親管理から小児肝移植レシピエントの自己管理へと移行できる状態か否かを判断できる尺度の開発が求められる。