本邦における脊椎変性疾患の有病者は, 近年の高齢化社会の到来とともに急増している. 従来では手術を回避していた高齢患者においても, 低侵襲化された脊椎手術においては実施が検討される傾向になっており, 脊椎変性疾患に対する手術件数は増加傾向にある.
頚椎症性脊髄症は脊椎変性疾患の代表疾患である. 加齢によって解剖学的構造が変化しながら静的要因と動的要因が病態に関与するメカニズムは, 頭蓋内疾患と大きく異なるため, われわれ脳神経外科医が脊椎疾患を診断・治療する際に留意すべき事項である. 本稿では数多い外科的治療の選択肢が存在する現状と手術計画の立案に必要な知識について, 文献的考察を加えて説明している.
腰椎変性疾患に対して多様な術式選択が可能となったが, 目的に応じた使い分けが必要である. 顕微鏡あるいは内視鏡を用いて脊柱管や椎間孔内での神経除圧を行うことができるが, 椎間関節などの脊柱支持組織を温存する必要がある. 後方からの椎体間固定術は支持組織の温存を意識せず, 直視下で脊柱管から椎間孔まで神経除圧を行うことができる. 側方からの椎体間固定術の発達により後腹膜腔経由の前方手術が適応しやすくなった. 椎体の側方から手術操作を行うため大血管の処置を要しない. 椎体間スペースの拡大による神経の間接除圧しか行えないが, 多椎間固定を要する脊柱変形の矯正に適応しやすい.
脊髄動静脈シャントは, 病変が微小かつ複雑で, 脊髄は侵襲により容易に障害され, すべて稀少な疾患であり, その治療の難度は高い. 塞栓術は, 骨切除が不要で脊髄血管をあらゆる方向から観察できるが, 屈曲蛇行が強く細い脊髄血管ではシャントまで到達できず塞栓物質の迷入の危険性がある. 外科手術は, アプローチが可能な部位での離断は容易・確実であるが, 脊髄腹側や脊髄内部への到達は困難である. 脊髄硬膜動静脈瘻は流入血管の屈曲蛇行が強く, 外科的離断のほうが確実で, 脊髄硬膜外動静脈瘻では流入血管が直線的で, 塞栓は比較的容易である. Perimedullary AVFおよび頭蓋頚椎移行部動静脈シャントは塞栓術でも根治可能であるが, 外科的にアプローチが可能であれば離断は容易で安全である. 一方intramedullary AVMの安全な根治は現状では不可能である.
症例はヨルダン人の11歳男児. 突然の意識障害を発症し, 精査にて小脳脳動静脈奇形からの出血と診断し, 緊急で開頭血腫除去術および外減圧術を施行した. 症状は徐々に改善し, 頭蓋形成術を行ったのち自宅退院となった.
患者および父親はイスラム教徒であった. イスラム教では豚肉やアルコールなどの摂取が禁じられているが, ゼリーや醤油などそれらを材料として含み得る飲食物も忌避されるため, 提供する病院食にも難渋した. また, 脳神経外科で使用する薬剤, 医療材料にも, ヘパリンなど動物由来の成分を含むものが多くあり, 使用に配慮する必要があった.
脳神経外科で扱う動物由来成分を含む医療材料, 薬剤についてまとめ, 報告する.
多発性髄膜腫は散発性や神経線維腫症Ⅱ型を背景に生じる. 今回われわれは多発性髄膜腫を呈した神経線維腫症Ⅱ型の34歳男性に対し, 一期的に2病変の切除術を施行した. 大脳鎌部病変は11年間の経過観察で明らかな増大を呈さず, Psammomatous meningioma, WHO grade 1の診断であった. 円蓋部病変は発生から3年間で増大傾向を示し, Atypical meningioma, WHO grade 2の診断であった. NF2関連多発性髄膜腫は異なる組織学的サブタイプおよびWHO gradeを示し得るため, 治療計画は各病変の特徴および成長速度に基づいて策定すべきである.
日常診療に役立つITのうち, 取り入れると便利なクラウドサービスの活用とパスワード管理についてまとめた. さまざまなクラウドサービスを活用することで, スマートフォンとパソコンのデータを連動させるかたちでスケジュール管理, データのバックアップなど, データの一括管理に重宝する. 特にパスワード管理への活用はお勧めである. 脳神経外科診療に役立てば幸いである.