治療中の患者に脂肪乳剤投与を考慮する, あるいはNSTから勧告されるような状況で, 投与に関わるさまざまな制限のため, あるいは弊害を危惧するため, その使用を躊躇することがあり得る. 本論文は患者への安全性と利便性の向上とを目指して, 臨床の現場で脂肪乳剤の適切な使用方法について検討した.
まず冒頭で栄養療法・栄養介入の重要性, 脂肪乳剤投与の功罪と日本における現状, 脂肪製剤による違いなどについて最新の文献を参照してまとめた. 続いて本編において脂肪乳剤の使用法についての問題点として, 1.投与速度, 2.薬剤混合, 3.侵襲下投与, 4.術後早期の使用, を挙げ, 各種ガイドライン, その根拠としている出典文献, 最新の報告を参照して, 個別に回答を探求した.
個々の問題点に対する回答は以下のごとく考える. 1.一般的に0.1g/kg/時間以下の速度での投与が推奨されるが, 必要であれば症例に応じてより速い投与は可能である. 2.基本輸液製剤への側管からの投与は問題ない. 3.侵襲下投与については第2・第3世代脂肪乳剤は安全であるが, 大豆油は症例に応じて慎重に適用すべきである. 4.手術直後からの脂肪乳剤投与は可能であるが, 内因性エネルギー動員を考慮して3‐4日目以降から開始する.
本論文の要点は以下の通り. 国内では使用できない中鎖脂肪酸・魚油製剤(いわゆる第2・第3世代脂肪乳剤)の導入が急務である. 脂肪乳剤の使用法については, 個体差が大きいので個別化した投与を行わなければならない.
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