大林組技術研究所報 No.87 2023

REPORT OF OBAYASHI CORPORATION TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE

株式会社 大林組

ごあいさつ



執行役員
技術研究所長

勝俣 英雄

大林組技術研究所報第87号発刊にあたり、一言ご挨拶申し上げます。

2023年、やっと社会活動がコロナ禍前に戻って来たようです。対面形式の会合が増え、マスクをつけない人も増えました。一方で、インフルエンザが夏の終わりから流行しています。これはコロナ禍最中の徹底した対策の反動のようであり、感染症との付き合い方は難しいものだと感じています。

仕事面では、読者の皆様も感じておられる通り、コロナ禍前に単純に戻った訳ではありません。テレワークでも意外に仕事はできる、けれどもテレワークができない仕事もある、などに理解が進みました。一部には、働く人それぞれの事情に応じた仕事の仕方も許容されてきました。そして、「働く」とはそもそもどういうことなのか、問われているようです。また、建設業は2024年に改正労働基準法の労働時間の規制を受けます。さらに、コロナ禍後の経済の活性化に伴う人手不足があり、少子高齢化や入職者減少を考えると建設業の働き方改革は待ったなしです。

大林組でも「中期経営計画2022」で働き方改革や働きがい改革を目指しています。そこで、2023年の技術研究所報では「働きがい改革・働き方改革」と題して特集を組みました。「働きがい」に関しては業務内容の魅力や人事制度などの影響が大きいとは思いますが、技術研究所としては働く「場」の「快適性」に着目しました。すなわち、除菌技術・遮音・火災時の燃焼制御・人の位置把握といったハード技術だけでなく、執務室の設えの働き方への効果・ワーカーの分類という人間科学分野の研究も紹介します。さらに、都市の生態系調査を報告します。また、「働き方」に貢献する技術として「生産性向上」に焦点を当てます。建築生産の自動化技術を概観し、3Dプリンターで建設した建築物の概要を述べます。工事の管理技術として盛土工事・杭・補修記録・溶接温度・コンクリート打設工区割りについて示し、関連研究としてコンクリート打設の降雨対策・ソイルセメントの硬化時間制御・超高強度モルタルの自己治癒・組み立てインサートを紹介します。

一般論文では、カーボンニュートラルに貢献するコンクリートの研究開発を報告します。さらに、構造関連では柱RC-梁鉄骨構造・道路床板更新の合理化・鉄骨梁端補強の適用拡大・再生CFRPによるRC柱の研究を紹介します。土工事・地下工事に関連して粉塵防止材・土壌汚染物質の分解菌・トンネル工事における前方探査技術と支保適正評価技術・山留壁の変形抑制技術・杭の出来形確認技術を掲載しました。さらに、風工学における数値解析について概観し、竜巻状気流や火山灰の市街地への堆積の研究を紹介します。一方、未来技術として月の砂で作る建材や光合成する建築ファサードに関する基礎研究、次世代の道路構想のモックアップの設計・施工報告、さらにはアワビの陸上養殖についても取り上げています。最後に、火災時避難の簡易検証手法、および遠心模型実験施設の活用技術も紹介します。

この所報には萌芽的なものから現場適用が期待されるものまで入り混じっていますが、これは大林組技術研究所の活動範囲を示していると思います。また、今回の「働きがい改革・働き方改革」の特集には建設業に限らず応用できるものがあるかもしれません。読者の皆様の参考になれば幸いです。

2023年12月

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