抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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これまで,水素が結晶材料の破壊を齎すという水素脆化は問題とされてきた。この水素脆化の原因の一つして,点欠陥である水素と他の格子欠陥との相互作用による特異な水素拡散挙動が生む水素濃度分布の変化が挙げられる。そして,結晶中の水素原子の拡散運動について,マクロ的なスケールにおいてもミクロ的なスケールにおいても,多岐にわたる研究がなされてきた。だが,マクロとミクロの拡散特性に関する夫々についての考察がなされてきたが,これらを統一する理論は,未だ構築されていない。本稿では,この統一理論構築の基礎として,分子動学シミュレーションによるNi中の水素拡散過程を検討した。まず,Ni構造中の水素拡散過程を追跡し,そこから,水素原子の平均二乗変位を求め,この平均二乗変位から拡散係数を求め,そしてアレニウスプロットを得た。次に,跳躍拡散モデルからも同様に拡散係数を得た。そして,これらの拡散係数は,互いに非常に近い値を有していることが明らかとなった。また,アレニウスプロットを取り実験値と比較した場合,同じオーダの値であることと,更に,跳躍拡散理論に相関係数を考慮することで,平均二乗変位により求めた値に近づくことも分かった。更に,平均二乗変位を求めることで得られた拡散係数と素過程となる機構を考慮することより得られた拡散係数に対し,その温度依存性を比較し,これに基づいてNi-fcc構造中における水素原子特有の拡散メカニズムについて考察した。