抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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気候変動や農地管理の変化により,我が国の農耕地土壌炭素量がどのように変化するかを時空間的に示すため,土壌炭素動態モデルRothCの検証・改良及びその基礎となり得る野外加温実験を行うとともに,全国の農耕地に1km解像度でモデルを適用して農地管理の変化による温暖化緩和ポテンシャルを推定した。土壌環境基礎調査(基準点調査)のデータを利用して,RothCの各画分における分解率関数のパラメータを,MCMC法を利用して推定したところ,施肥量が多いほど活性化エネルギーは小さくなる傾向が見いだされ,施肥によって分解活性,温度感受性が異なる可能性が示唆された。土壌環境基礎調査(定点調査)から抽出した水田5070点のデータを用いて,RothCの多点検証を行った結果,実測値とRothCの推定値を比較すると残差二乗和の平方根(RMSE)の平均は25.7%,平均誤差(ME)は+12.8%であった。さらに,RothCモデルの水田用改良版の有機物分解速度係数(水稲作付期間0.2,非作付期間以外0.6倍)について,基準点調査の47地点254処理区の多点データを用いて検証したところ,水田用の分解率係数0.2と0.6は,それなりに妥当であると判断された。農環研内の畑圃場において,土壌加温システムを開発し,野外加温実験を開始した。土壌表面からの二酸化炭素フラックスは,対照区と加温区で有意な差がない場合が多く,モデルを改変する根拠とはならなかった。以上から,オリジナルのRothCモデル及び,黒ボク土用,水田用それぞれの改良モデルの3つを併用して広域評価を行うこととした。RothCを1km解像度で適用し,堆肥や作物残渣の投入量を増やす仮想のシナリオによる土壌炭素の増加量を全国推定したところ,25年間に堆肥シナリオでは3,200万t C,水田緑肥シナリオでは1,100万t Cの土壌炭素が,有機物未投入シナリオに比べて増加した。さらに,現実的な活動量データとして,単位面積当たりの土壌への炭素投入量(作物残渣,堆肥)を,水田,畑,樹園地,草地の4つの土地利用別,47都道府県別に1970~2020各年の値を整備し,全国計算を行ったが,活動量データの精緻化,及び土地利用変化の履歴を計算に取り入れるためのデータ整備が課題として残された。...(著者抄録)