抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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重金属類は,工業排水等から河川流域で拡散し,人の健康リスクへの影響が懸念されている。河川流域における重金属類の環境中の移動には,水,周辺の土壌や岩石等が深く関与すると考えられている。特に,人為由来の重金属の影響を論じる上で,自然環境における地質学的なベースラインの把握が極めて重要である。本稿では,環境中の重金属類の環境動態に関わる主要な要素を明らかとするため,名取川水系を調査対象として,堆積物,河川水,および,土壌から得られる重金属類の濃度やpH等の高次元データから,因子分析により,主要元素の移動性の様な地球化学的支配要因の推定を試みた。まず,名取川水系から試料を採取し(堆積物:14試料,土壌:14試料,河川水:15試料),Pb,As,Cr,および,Znの分析を実施し,更に,因子分析により,重金属類の環境動態に関わる重要な支配因子を推定した。この結果,堆積物と土壌に分布するPbとAsでは,自然環境中で堆積物と土壌中に共通因子が認められ,Crについては,自然環境中の堆積物と土壌中の分布に共通因子が見られなかった。また,河川中のZnの濃度変化では,堆積物や周辺土壌からの負荷の可能性が示唆された。特に,Crの分布メカニズムは,自然災害や河川工事等の人為的な影響による堆積物や土壌への供給である可能性が高い。鉱山のずりなどの含まれるZnは,PbやAsの母岩からの供給やCrの堆積プロセスとは異なる分布や要素間の関係を示していた。このことから,重金属類の環境動態は,自然のプロセスの中で減衰する傾向が示唆され,鉱山から水質や底質への影響は,現在では殆どないことが示唆された。