抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
神戸市立王子動物園で誕生してから2歳まで母親と共に飼育されてきた雄のカバ(Hippopotamus amphibius)の出目吉(2014年7月28日生まれ)が,姫路市立動物園へ移された.本研究では,王子動物園で母と一緒に暮らしていた期間(1ヵ月間)と母から離れて単独で暮らしていた期間(2週間),そして,姫路市立動物園の新しい環境で暮らし始めてからの期間(移動後2ヵ月間及び11ヵ月目の2週間)に出目吉の行動観察を実施した.移動直後の2週間では,移動前の母との同居期間と単独期間に比べて,出目吉の採食と探索行動の生起率は大きく減少し,逆に,水中にいる時間が増えた.さらに,身体全体を水の中に完全に沈めている潜水の時間も増加した.しかし,移動後3週目から水中で滞在する時間の割合が減少し,逆に,採食と探索行動に費やす時間の割合が増加した.これらの事実から,出目吉にとっては新しい環境への移動直後の2週間は水中に留まり続け,採食時間も少なくしなければならないほどの心理的負荷が強かったと推測されるが,その後は徐々に新しい環境に馴化したと言える.動物園を移動する前,そして移動後の新しい環境に慣れるまでの期間にわたって行動観察を実施した本研究の成果は,展示動物のwell-beingの向上や適正な管理を推進するための基礎資料として重要であると思われる.(著者抄録)