抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本特集は,不便がもたらす効用を「不便益」と名付け,これを積極的に活用するシステムデザインについて様々な立場から考察したものである。本章では,不便益の事例として,「関係論的なロボット」「弱いロボット」に関する議論を整理し考察する。乳児は一人では何もできない「弱い存在」でありながら,養育者からのアシストを上手に引き出しつつ,結果としてミルクを手に入れ,行きたいところ移動してしまう。一方,養育者はこの乳児に手を焼きつつも,その乳児をアシストする中で,自分の存在価値の一部を乳児によって与えられるような相互構成的な関係を作り上げている。このような考えから生まれたものが「関係論的なロボット」「弱いロボット」である。本稿では,その事例として,「ゴミ箱ロボット」を紹介した。これは,自分ではゴミを拾えないけれど,子どもたちのアシストを上手に引き出しながらゴミを拾い集めてしまう,やや他力本願なロボットである。これを例に,人とシステムとの相互構成的な関わりや関係発達論的な関わりについて議論した。最近の「不便益」に着目する流れは,モノや道具の「個体」に備わる機能(=便利さ)を追及するのではなく,むしろ人との深い「関係」から立ち現われる,新たな価値を指向する動きと捉えることができるように思う。