抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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新世界サル,旧世界サル,および類人猿を含む77の類人猿種について,樹上生活性および地上生活性,母体体重に対する出生時(同腹仔)体重,出生時の特徴的な皮色の有無に関し,背中での運搬分布を研究するため文献調査を行い,さらに霊長類研究者および動物園の飼育係から情報を得た。すべての新世界サルは樹上生活性であり,通常は幼児を背中で運搬していた。一方樹上生活性の旧世界サルは背中での運搬を行わず,大多数の地上生活性の旧世界サルのごく一部もそうであった。(高度な樹上生活性の)小型類人猿は背中での運搬を行わず,樹上生活性と同様により大型の地上生活性の霊長類は通常幼児を背中で運搬していた。これらの発見から,ただ単に樹上生活性もしくは地上生活性ではサルの背中での運搬を説明するのは不十分である。小型および中型の新世界サルの幼児は母体体重と比べ比較的出生時体重が重く,出生後第1日目でさえ腹側ではなく背中で運搬することが多い。一方,体の大きい旧世界サルの幼児の場合,最初は腹側で運搬し,その後2年まで背中で運搬するが,稀な例が増えてきている。旧世界サルの中では,幼児の運搬方式と,母体体重と比較した出生時体重間には関係は認められなかったが,背中での運搬を行う地上生活性の旧世界サルの中には年齢の高い幼児に対してそのように扱うことから,この行動は母親が低いエネルギー消費で幼児を運搬することを可能にしていることを示している。地上生活性の旧世界サルの中では,特徴的な皮色の幼児は幼児の皮色が成体の皮色に変化するまではめったに背中で運搬されることはない。運搬者の背中に特徴的な皮色の幼児がしがみついている場合,非常に目立つ存在となるため捕食に曝されやすい。母親による背中での運搬は親和的な母親-幼児関係を延長する。(翻訳著者抄録)