抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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海洋物質循環経路の一つである微生物ループの中心とされる細菌群集は,現存量が海水平均で10
6 cells mL
-1であり,その生産活動で消費する有機物量は基礎生産量に対して半分以上にも達する。細菌群集を経由する有機物フラックスは,海洋生態系における炭素循環や栄養塩再生を左右していると考えられている(Ducklow 1993,Azam 1998)。海洋細菌によって消費される有機物量は,放射性物質をトレーサーとして用いた生産量測定法(チミジン法,ロイシン法)によって,世界中の様々な海域で測定されてきた。また,1990年以降は,分子生態学的手法による群集構造解析によって,主要な細菌グループの存在が明らかにされてきている。海洋細菌群集は,その生活形態において,有機物粒子に付着している付着細菌(Attached bacteria)と,水中に浮遊している自由遊泳細菌(Free-living bacteria)に分けることができる(Azam and Hodoson 1977,Cammen and Walker 1982)。これまで,海洋環境では自由遊泳細菌が優占していること,付着細菌は高い菌体外酵素活性を示すこと,両者の群集構造には明確な違いがあることが報告されている。こうした違いは,細菌群集を経由する有機物フラックスの変動に影響を与えることになるが,細菌群集の生産活動や群集構造を併せて生活形態による違いについて,長期的な時空間変動を観測した例はほとんどない。本研究では,相模湾真鶴沖に設けられた定点St.Mにおいて,付着細菌および自由遊泳細菌の生産量,群集構造の継続的な測定,解析を行った。これら細菌群集のデータと他の生物・物理・化学的データとを比較し,相模湾西部沿岸域の細菌群集の生産活動と群集構造を決定付けている要因を探るとともに,海洋物質循環に果たす付着細菌と自由遊泳細菌の役割の違いを明らかにすることを目的とした。(著者抄録)