抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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浅間山周辺における湧水中の溶存炭酸(DIC)の起源,形成プロセスの解明や水質に対する火山ガスの影響を定量的に評価することを目的に,DICの炭素同位体比(δ
13C
DIC値)の測定を行った。また,その起源と考えられる火山性CO
2と土壌CO
2の炭素同位体比の測定を,それぞれ地獄谷噴気および山麓の数地点において実施した。浅間山周辺の湧水は,水温・電気伝導度・水質組成などの物理化学特性に基づき9つの湧水群(A~I)に区分できる。湧水群Bを除き,DIC濃度が高いほどδ
13C
DIC値も高くなるという関係から,対象地域における湧水中のDICの起源は,同位体比の低い有機物起源の土壌CO
2と,火山活動に由来するマントル成分を含む深部起源である火山性CO
2の二成分混合によって説明できることが判明した。この結果に基づき,DICと平衡状態にあると仮定されるCO
2の同位体比(δ
13C
CO2値)を用いて,DICに対する火山性CO
2の寄与率の計算を行った。その結果,水質特性から火山ガスの影響が推定された山麓に位置する湧水群C,F,Hでは40~60%程度,そして火口に近い山体斜面に位置する湧水群Iでは90%以上もの火山性CO
2が,湧水中のDICに寄与していることが明らかとなった。一方で,湧水群A,D,E,Gについては火山性CO
2の寄与がほとんど無く,水質から得られた結果との明瞭な対応関係が確認された。また,他の湧水が示す二成分混合の傾向から大きく外れる鬼押出し溶岩流末端部に位置する湧水群Bでは,本地域で最も高いδ
13C
DIC値を示す一方で,DIC濃度が低いという特徴が認められた。これは,火山性CO
2の影響を受けた地下水が,その流出過程において通気性の高いクリンカー部を流動するため溶存CO
2の脱ガスが起こり,δ
13C
DIC値が上昇した結果と考えられる。(著者抄録)