抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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今まさに白熱電球が時代を終え,新たにLEDの時代を迎えようとしている。これから創造されるあかり文化を考えるためにも,過去の光環境の推移を見直すことが重要と考えるが,過去の資料がない状況では,見つめようがない。照明についても,未来に引き継ぎ残すべきものが何かを考えるべき時期を迎えている。現在のあかり文化の節目と同じように,かつても,蝋燭やランプの光から,ガス燈を経て,白熱電球が普及しようとしていた時代があった。今回,著者らはその時期の照明・電気設備を残す旧西尾家住宅の調査の機会を得た。本稿では,吹田市にある重要文化財旧西尾家住宅の照明・電気設備を紹介する。旧西尾家住宅の主屋は,吹田に電気が供給された明治44年以降の初期に,電気照明設備を整えたと考えられる。主屋の建築は明治28年であり,電気設備の使用を前提としていない。従って,主屋に現在も設置されている数多くの電気照明設備は,まだまだ電気照明が普及していない頃に設置されたと考えられる。電気照明は,当初ランプと類似した利用がされ,次いで,造作天井の照明やバルベットなど建築との一体化が進んでいく様子が見て取れる。電気照明設備の初期段階において,ランプやガス燈では困難であった照明と建築との一体化が,多くの新たな試みとして取り組まれており非常に興味深く,電気照明設備の残存資料として貴重である。明治時代以降の近代の建築遺産では,建物の平面計画や外観が洋式・洋風になったと同時に,さまざまな先進的な設備機器が導入された。照明器具はもっとも早く普及した設備機器の1つであろう。近代建築は,設備機器も含めて遺産的価値があると言えるが,歴史的な価値が認められている近代建築であっても,建築本体は残っていても,照明器具などは取り替えられて残っていないことが多い。あかりに関する博物館もいくつかあるが,主に古い灯器を収集,展示するだけのものである。できれば,建築空間と照明器具が保存され,当時の光の場が保存・再現可能となるような取り組みが必要と考える。