抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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Cryptococcus属酵母が生成する油脂の脂肪酸組成をココアバターと比較すると,ステアリン酸の量が少なく,ステアリン酸が不飽和化されたオレイン酸,リノール酸,α-リノレン酸が多いため,チョコレート用油脂にするためには,脂肪酸組成を改変する必要がある.脂肪酸組成の改変については,培地中にステアリン酸,ステアリン酸エステルを添加する方法やステアリン酸の不飽和化に働くΔ9デサチュラーゼ変異株の作製,ステアリン酸高生成株のスクリーニングなどが試みられた。これらの検討により,ココアバターに非常に近い組成に調製することができているが,まだ,α-リノレン酸や長鎖脂肪酸(24:0)の混入が見られ,品質的には改善の余地が残っている。チョコレート用油脂の発酵生産については,コスト的に優位に立てないという判断から,これ以上の研究は進められず,いったん終息していった。しかし近年,地球温暖化防止のためCO2削減の機運が高まり,バイオ燃料が注目されるなか,酵母による油脂生産が再び見直されてきている。また,油脂蓄積に関わる遺伝子群についての解析や脂肪酸の不飽和化にかかわる遺伝子の転写制御機構の解析,生産プロセスを考えた場合,コスト低減に大きく寄与すると考えられる油脂を分泌する菌の報告など,過去に検討が行われていた時には明確ではなかったことが解明されつつある。これらの知見を統合していくことで,将来的には酵母によるチョコレート用油脂の生産も可能になるのではないかと期待される。