抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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海洋に位置するコンクリート構造物のうち,港湾コンクリート構造物の設計手法は性能照査型に移行することとなった(2007.4に移行)。性能の経時変化に対する照査を行う際に3つのパラメータ(腐食発生限界塩化物イオン濃度C
lim,表面塩化物イオン濃度C
0,塩化物イオンの見かけの拡散係数D
ap)を定める必要があるが,各パラメータの実態は明らかではなかった。そこで本研究では上述のC
lim,C
0,D
apの実態を,実構造物調査および試験体による暴露試験を基に把握することとした。そして,その調査結果を基に,各パラメータの設定手法の提案を行うこととした。また本研究において,耐久性能照査の対象として,上述の塩化物イオンの侵入による鉄筋腐食(塩害劣化)に加えて,海水中のイオンの侵入に伴うコンクリートの劣化(硫酸塩劣化)も含めた。以下,主な研究成果について述べる。1)塩害劣化に関する上記3つのパラメータのうち,C
limについては,実海洋環境下における長期暴露試験結果を基に2kg/m
3という設定値を提案した。また,コンクリート構造物の耐久性を高めることを目的とし,ステンレス鉄筋を用いた場合のC
limについて,長期暴露試験を基に,今回使用したステンレス(3種類)については,少なくとも12kg/m
3以上であることを示した。C
0については,実構造物調査結果を多数収集し,環境を表わすパラメータとの相関を検討した結果,「H.W.L.(さく望平均満潮面)からコンクリート部材表面までの距離(X)」を抽出し,C
0をXとともに直線的に低減させる式(C
0=-6.0X+15.1)を提案した。D
apについては,実環境下における多数の長期の暴露試験結果および実構造物調査結果を収集し,水セメント比W/Cとの相関を整理した。その結果,セメント種類が普通ポルトランドセメントの場合については,土木学会「コンクリート標準示方書」に提示されている回帰式に補正係数(0.65)を乗じる手法を提案した。2)硫酸塩劣化に関して,実環境に長期間暴露した多数の試験体および実構造物より採取した多数のコアに対して,化学的および力学的な両面から調査検討を行った結果を基に,海洋環境下でのコンクリートの劣化手法の提案を行った。(著者抄録)