抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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自然エネルギーに対する関心が高まる中,風況適地とされる北海道沿岸部では風力発電施設の建設需要が高まり,特に日本海側において多くの風力発電施設が建設されてきた。陸域に開発適地を求めにくくなってきた我が国において,海浜地への風力発電施設の導入が注目されてきた。しかし,海浜地域に分布する海浜植生は,国土の1%未満と言われる自然草原の一形態として希少であり,市民や研究者から開発による影響が懸念されていた。本稿では,海浜植生上に風力発電施設の建設が計画されている北海道銭函海岸を事例として,風力発電施設の設置が海浜植生に与える影響について,既存研究から検証することを目的とした。建設により,完全に喪失する海浜植生に関しては,その環境における海浜植生の位置づけを踏まえて,その喪失面積が当該植生の存続にとって危機的割合であるか否かを検討することが重要である。また,一時的に喪失する海浜植生に関しては,比較的撹乱からの回復が見込めると推察されたが,微妙なバランスで保たれている海浜環境に生育することから,建設による影響で砂の移動量や風向の変化により,風食や外来種の増加する可能性に関して十分な配慮が必要である。銭函海岸における風力発電施設建設に関する一連の問題は,「当該地域の自然環境をどのように位置づけるか」という社会的要因が大きいと考えられた。世界的に再生可能エネルギーへの期待が高まっている中,エネルギー政策を国策と位置づけるのであれば,国は地方自治体と連携して,市民の意見も集約した開発適地の情報を取りまとめ,むしろ積極的に開発適地への誘致を行うことが必要であろう。(著者抄録)