抄録/ポイント：
抄録/ポイント
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経済活動に資源を必要とする以上,資源を提供する環境に負担を与える。大気と水はもっとも基本的な資源であり,これをいかに消費するか,は持続的経済成長において基本的かつ喫緊の課題である。空間的に偏在している資源を,現世代だけでなく後の世代にどれだけ引き渡すことができるのか,空間的時間的資源利用の公平性が考慮されなければならない。本稿は,空間的に水資源が偏っている中国において,地域間交易によってどれだけ環境公平性を実現しているかを計測する。具体的には仮想水貿易マトリックスを作成し,各地域の水資源量が地域間交易によって水不足地域に過度な水需要圧力がかかっていないかどうかを確認する。そこで,各地域の最終財消費という視点から,地域間産業連関表を用いて消費型(Consumption based)で仮想水交易を推計した。得られた知見は以下の通りである。1)中国の水資源は,長江流域を一つの区切りとして中国の南側に偏在している。2)北京,天津,河北,そして江蘇,上海という華北,華東経済発展地域では水消費が多いために存在する水資源以上の水が消費されている。3)上記華北,華東地域は仮想水を移入することによって水資源負担をやわらげている。4)一方,広東や四川など水豊富な地域でも中国各地からの仮想水移入は大きく,中国の水資源に負担を与えている。5)水不足地域の寧夏,内モンゴルは仮想水を移出しており,同じく中国の水資源に負担を与えている。6)中国全土において仮想水純輸出は大きく,国際貿易は中国の水資源に負担を与えている。これらの知見から,中国水資源管理における政策インプリケーションが得られる。地域間交易は華北,華東地域において水資源負担に貢献しているが,広東や四川,寧夏や内モンゴルにおいて水負担が不公平になっているため,水資源をもっとも消費する農業の空間的再配置が求められる。(著者抄録)
