抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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都市を流れる河川空間に逸出して生長する植物は,在来種への影響が懸念される一方,人工的な都市河川の様相に独特の趣を与えもする。都市の「自然」あるいは「生物多様性」を考えるとき,このような逸出植物の景観要素としての価値と可能性,あるいは都市の自然要素としての限界に関する検討が必要と考えられる。本研究は福岡の代表的都市河川である2級河川の御笠川(流域面積94km
2,幹川流路延長24km)を対象とし,ロックガーデン用の園芸植物であるヒメツルソバ(Persicaria capitata(Buch.-Ham. ex D.Don)H. Gross.)の分布の実態を調査した。そのうえで,ヒメツルソバ生育の条件について若干の考察を試みた。調査項目はヒメツルソバ群落の,1)平面位置,2)断面位置,3)面積,および4)方位とした。1)は河口基準点からの距離,2)は平水時の水際から群落上端までの距離(斜距離),3)は群落を内に含む最小の長方形の面積(写真で方形を宛がい近似測定),4)は群落のある法面の法線方位で表した。ヒメツルソバ群落は,調査範囲である河口から20kmまでの全体にひろく分布していた。その一方で,上流の宅地が密集する区間でとくに多数の生長が確認され,宅地からの逸出の可能性が示された。また水際から群落上端までの距離と群落面積の分布形状はそれぞれ正規分布と指数分布に高い適合性を示し,平均値はそれぞれ1.69mと0.17m
2となった。これらにより護岸法面におけるヒメツルソバ群落の最適な位置と規模の目安が示唆された。一方,上流に行くほど群落が水際に近くなる傾向と,水際から遠い群落ほど規模が大きくなる傾向も垣間見られた。また,上流区間の4mを超えるコンクリート製護岸の下部の水抜き孔付近に群落が多くみられる個所もあった。護岸法面の法線の方位の検討から,ヒメツルソバ群落が北ないし北西の,強い日光を受けない法面においてよく生長する傾向があることが明瞭であった。日射で比較的高温化する法面方位の護岸での生育には適しないことが示唆された。(著者抄録)