抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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著者らは,極力単純化した系に対する凝着現象の精密な計測を行い,それらの結果をうまく説明できる理論を提案し,より一般的な凝着現象の説明も可能にすべく研究を続けている。本報では,特に,現象が理論で明快に説明付けられている部分を中心に解説した。1)凝着部の状況を決めるのは凝着仕事で,凝着界面を引き離すのに必要な単位面積当たりの仕事と定義される。表面張力の定義は「単位面積の表面を創出するのに必要な仕事」である。界面張力の定義は「単位面積の界面を創出するのに必要な仕事」であるので,凝着仕事は,それぞれの物質の表面張力の和と界面張力の差であり,物質の組合せで決まる物性値である。ほとんどの場合は物質の種類のみで決まるが,表面や界面の状態により変化する。全く等しい凝着仕事をもつ真実接触界面であっても,凝着力が大きく異なることは多い。これは,破壊メカニズムが異なるためである。凝着力を理論的に見積もるには,破壊力学の手法が有効になる。2)エネルギー散逸のない弾性体の凝着モデルについて,四点を説明した。a)エネルギー散逸の有無とエネルギー極小条件として,凝着部の破壊の際に,外部から加えられた仕事は,界面の破壊と物体の変形に用いられ,さらに別の何らか形で散逸する。物体が完全弾性体であれば,変形に用いられたエネルギーは歪エネルギーとして弾性体に蓄えられる。界面の破壊に必要な仕事は凝着仕事により決まるので,他にエネルギー散逸のメカニズムがなければ,系全体のエネルギー極小条件から凝着状態を予測計算できる。ゆっくりとした凝着現象であれば,この安定状態が準静的に連続して遷移するとみなして予測できる。b)軸対象放物曲面をもつ剛体が半無限弾性体と接触しているモデル,c)傾斜させた完全弾性はり側面を,剛体平面に押し付ける凝着モデル,d)正弦波状の表面粗さをもつ剛体と半無限弾性体の凝着モデルの例を示した。3)一般に,凝着物体は弾性体とは限らない。したがって,エネルギー極小条件を用いることはできない。外部から与えられた仕事が,変形,界面とその他の散逸にどの割合で分配されるかを理論的に明らかにする必要があり,予測計算は難しい。