抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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環境中に存在する化学物質の濃度勾配に向かつて,微小な生物体が指向性を持って移動することを化学走性という。化学走性は,概念的に運動性,方向感知,極性の3つの過程に分類できる。本稿では,環境中の化学信号によって機能が発現するソフトマターの研究について紹介する。非生物体では,外部刺激が存在しない状況下では運動性を示さないため,本稿では,化学誘引物質の濃度が均一な状況下で,変形せずにソフトマターが自発的に重心の移動を行う現象を運動性と定義する。本文では,Marangoni効果に化学反応をカップリングさせて,ソフトマターに運動性および方向探知機能を発現する研究を報告した。DEHPAと反応して錯体を形成したジスプロシウムは,油滴中に取り込まれることが,偏光ゼーマン原子吸光光度計を用いた精密分析により明らかとなった。すなわち,この油滴は環境中のPHによる化学信号により運動性を発現し,ジスプロシウムの濃度勾配によってターゲットの存在位置を感知して自ら移動し,なおかつ自動的に油滴内部にジスプロシウムを抽出する自律型抽出装置として機能する。ジスプロシウムは,近年の輸出規制により,非常に希少な物質となっている。