抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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トウキョウXはバークシャー種,デュロック種,北京黒豚を基礎品種に1997年に系統認定された日本初の合成系統豚である。トウキョウXは系統認定後17年を経過しており,近交度の蓄積による近交退化が危惧されている。そこで血統情報から実際の平均近交係数(F),任意交配時の平均近交係数(f),平均血縁係数(R)および遺伝的寄与率(GCR)を算出し,遺伝的多様性を評価した。総産子数(TNB),生産頭数(NBA),死産頭数(NBD)および離乳頭数(NW)に対する母豚,父豚,産子の近交度の影響を分析するとともに遺伝率を推定した。解析データはトウキョウXの血統記録(1990年~2014年)および分娩記録(1997年~2014年)であった。F,fおよびRは1997年ではそれぞれ6.9%,9.3%および20.0%であったが,2014年にはそれぞれ11.8%,14.7%および26.6%まで上昇した。認定豚の雄のGCRは2000年頃から偏りが生じ始め,2004年以降はおおむね横ばいであった。寄与率の推移は個体により大きく異なり,雌のGCRでも類似した結果を示した。繁殖形質に対する各近交度の効果は全形質において5%水準では有意性を示さなかったが,母豚の近交度の上昇に伴い繁殖性が低下する傾向がみられ,TNBでは近交係数10%上昇あたり0.88頭減少する傾向がみられた。遺伝率はTNB,NBA,NBDおよびNWでそれぞれ0.11,0.07,0.03および0.05と推定され,繁殖形質の改良効率は高くないが,育種改良の余地があることが示された。マイクロサテライトにもとづく遺伝的多様性は高く,血縁度の評価には有効であることが示唆された。トウキョウXの遺伝的多様性を維持するためには,マーカー情報をもとに遺伝的構造を解析し,マーカー情報を用いた交配計画を検討することが求められた。(著者抄録)