抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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2015年度の型技術者会議で,SKD11鋼に被覆したPVD硬質薄膜の密着性に違いがあることを報告した。焼戻し温度が異なる場合でも表面硬さに大きな違いはなく,材料組織内の一次炭化物の大きさや分布が大きく影響を及ぼしていることを示した。今回は,この炭化物周辺で皮膜の密着性の低下原因の調査結果を報告する。またSKD11系材料で,炭化物を消失させる処理後,硬質薄膜との密着性も検討した。1)実験方法は,次の通り。A,B,C3種のSKD11鋼を同様に熱処理し,AIP方式で約1.5μmのCrNを成膜した。ロックウェル硬さ試験後,圧痕周囲の断面を観察し,皮膜剥離の原因を調べた。その際,ボンバード後の粗さ測定と硬さ試験をした。また電子ビーム照射したSKD11鋼に成膜したCrN膜の密着性を調べた。2)密着性評価試験を行った結果をあげた。ロックウェル硬さ試験後に皮膜が大きな損傷を受けた部位を,FIB加工して断面を観察すると,CrN皮膜と基材炭化物との間に空隙が発生し,炭化物と周囲のマトリックス部との高低差も見られた。3)炭化物が影響する要因を調べた。CrNコーティング工程直前にArイオンによるボンバード工程がある。比較的高いバイアス電圧をかけ,最表面の酸化物(層)をイオンにてエッチングする。ボンバード後の表面粗さの測定で,大きな炭化物があるA鋼では,大きな段差が生じていた。炭化物表面の硬質薄膜との密着性が弱いこともあるが,大きな応力をかけられた際にはこのような粗さ(高低差)が応力集中の起点となり,剥離が生じると考えられる。また,Arボンバード後の基材硬さの変化も確認している。500°C前後の高温焼戻をしても,B,C鋼はA鋼と比べ硬さ上昇が見られ,マトリックス組織との皮膜密着性への影響を及ぼすことも考えられる。4)電子ビームを照射した表層部は,溶融再凝固組織のγ組織であった。スクラッチ試験とロックウェル圧痕試験では,一部の鋼種で皮膜の全剥離荷重が向上できることもわかった。