抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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土のキャピラリーバリア(Capillary barrier:CB)システムの地盤環境工学分野および農業分野における社会実装の可能性を検討する。キャピラリーバリアシステムは,相対的に細粒の土とその下に粗粒の土を敷設した単純な土層地盤をいう。通常,相対的に細粒の土として砂が,粗粒の土として礫が用いられることが多い。浸潤や再分布により表層土から降下移動してくる土中水は,両層の境界面に達したところで捕捉され,下部の礫層さらにそれ以深の地盤に浸潤していくことはない。この層の境界面上部での浸潤水の捕捉は,砂の水分保持能力が,礫層内の相対的に大きな間隙への水の移動を抑制するほど十分に大きなあいだ,継続する。本文では,これまでに進めてきた圃場および野外条件下での試験調査にもとづき,キャピラリーバリアシステムの地盤環境工学ならびにかんがい農業工学分野における実務展開の可能性について検討した。地盤環境工学分野を対象としたケースでは,危険な廃棄物あるいは極低レベル放射性廃棄物を安全に隔離・貯蔵するためのCBを敷設した盛十式廃棄物貯蔵施設を提案する。貯蔵施設の断面規模を決定し,構造設計に重要な役割ももつCBシステムの限界長を室内土槽試験により調べた。2つめのCBの適用は,畑地における画期的なかんがい手法の展開をもたらすと考えられる。CB土層に捕捉された土中水が植栽の生長に及ぼす効果を圃場試験により調べた。パレスチナ国ヨルダン川西岸地区の半乾燥地域に設けたCB試験プロットにおいて土中水分の長期モニタリングを行い,降雨浸潤水がCB土層内に効率よく保水されることを確認した。これらの調査事例を通して,土のキャピラリーバリアシステムが,地盤環境工学分野ならびに農業分野の持続的な発展の推進に役立つことを示した。(著者抄録)