抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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平成23年(2011年)の台風12号は,紀伊半島で多数の大規模な土砂災害を誘発した。中でも四万十帯の牟婁層群の分布地帯では,紀伊半島の他のどの地質帯よりも破壊的で大規模な土石流が発生した。その特徴は,大規模な斜面崩壊により長径数mの礫岩・砂岩の巨礫を含む土砂が渓床に大量に滑落し,その一部が土石流となって長距離にわたって流下して,大きな被害をもたらしたことである。このような斜面崩壊とそれに続く破壊的土石流の発生後間もない状態は,その後の復旧作業によって多くが失われており,初期状態を記載して残すことは将来の研究だけなく,防災上も大きな意義がある。本稿では,この地域で最大級の土石流が発生した日置川水系の熊野(ゆや)川の源流部の熊野地区における崩壊斜面と土石流堆積物を調査して,それらの初期状態を記載した。また,この記載に基づいて土石流発生のメカニズムを考察して,大規模な土石流が発生した原因を明らかにし,斜面崩壊の発生から土石流の堆積までの過程を推定した。その結果,牟婁層群地帯では,礫岩・砂岩・泥岩が未固結の状態で付加作用を受けて激しく褶曲した際に,砂層・礫層は層内での側方流動により本来の層厚よりもはるかに厚い部分が生じ,それらが強固に固結したのち,斜面での深層風化により長径数m~10数mの巨礫となっていたこと,そしてこれらが山腹の高い位置から滑落し,大きな位置エネルギーを大きな運動エネルギーに変え,また風化で生じた細粒物質が潤滑剤の役割を果たしたこともあって,高速で流下して遠方にまで達したことが明らかとなった。(著者抄録)