抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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大地震に伴って地震波速度が変化することは古くから指摘されてきたことであるが,高い精度でこれを確認することは困難であった。1990年代に入り,散乱波から成るコーダの位相を利用するコーダ波干渉法が開発された。その後,常時微動の相互相関を用いた方法による速度変化検出法が提唱され,コーダ波干渉法と合わせて地震波干渉法による地震波速度変化の研究が普及することとなった。さらに,大地震発生後の速度変化の時間経過が観察されるまでに至った。本稿では,大地震発生に伴う地震波速度構造の変化とその回復過程に関する最近の研究のレビューを行った。大地震に伴う地震波速度変化は通常,速度低下であるが,その要因は強震動による地盤の非線形応答,すなわちある種の損傷によるという考えが今では主流となっている。速度低下状況の時間的推移の観察から,回復の傾向は指数関数的であり,その割合が経過時間の対数に比例することも知られている。こうした状況は亀裂面に対する化学的プロセスによって説明され,また回復の時定数分布がべき乗則に従ってフラクタル性を呈することも示されている。一方で,速度低下の要因を静的歪によるとする考えも残るものの,シミュレーションに基づいたその寄与は強震動の影響よりも小さいとされている。速度低下とは別に,大地震による影響がS波の偏向異方性にも及び,また,地震波の散乱特性にも影響が及んでいるとの報告もある。これらの変化は相互に関連しあい,また,大地震の影響には静的および動的要因もあって,さらに地震時のみならず余効変動の影響も含めて分析する必要があり,構造変化の分析と解釈においては様々に絡み合う複雑な要因を総合的に考慮することが求められる。