抄録/ポイント：
抄録/ポイント
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東京国立博物館蔵羽状文扁壺(TJ-630:戦国時代,高35.4cm)を3Dスキャンした。春秋時代後半から戦国時代にかけて様々な技法が発達したが,そのなかでも,本羽状文扁壺のようなスタンプ状工具の開発による文様は,細密でありながら生産性を飛躍的に高めたという点で,画期的な技術革新であった。3D計測データの検証から以下のことが判明した。1.文様の1単位はa型と,それを上下反転したb型から成り,a・b型は同形であるが,不規則な変形がある。2.文様の1単位を,縦3段・横3列の9単位に配置するI型と,この9単位1組を上下反転向きに配置したII型があり,I・II型は同形であるが,不規則な変形がある。3.I・II型には,別々に作ったa・b型の9個の模を,寄せて接着して繋げたつなぎ目線は無い。4.本扁壺4面にある計50個の区にI型とII型が不規則に配置される。5.青銅の凝固ガスが溜まった鋳造欠陥と范崩れの文様から,先ず,1単位を鋳造して青銅スタンプを作り,次に,この1単位のスタンプを范土に3段3列に9回押して造范し,それに鋳造して9単位1組の青銅スタンプを作った。さらに,この9単位スタンプを范土に1回押して43区の文様范を作った。残り7区のうち4区は9単位1組の青銅スタンプを范土に縦並びに2回押して,縦5段・4段・3段の斜め向き・横向き・縦向きの文様范を,2区は縦向き1回と横向き1回を押して文様范を,1区は斜めにつなぎ合わせて文様范を作り,水分を含んで可塑性がある各文様范を扁壺模の曲面に押し沿わせて並べ,外層范で一体にした各面の外范を作った。6.2つの獣面飾りは,同形であるが,羽状文様と同様に変形がある。(著者抄録)
