抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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近年,社会課題に対して,革新的で,持続可能な手法で解決し,経済的価値のみならず新たな社会的価値の創出を目指すソーシャル・イノベーションの重要性は広く認識されるようになっており,それに関する研究も増えている。ソーシャル・イノベーションを推し進める政策や先進事例の研究は,欧米が先行しているが,様々な社会課題が深刻化しているアジアでも,ソーシャル・イノベーションに対する関心が高まり,政策策定や事例支援などが急速に進展している。本研究は,東アジアの日本,中国,韓国を対象に,ソーシャル・エコシステムの形成における制度や政策,支援の進展と動向を比較分析し,ソーシャル・エコシステムの状況と形成のメカニズムを明らかにする。日中韓3カ国の共通課題の一つである少子高齢化に焦点を当て,子育てを取り巻く環境を考察したうえで,小学校までの子どもを対象にサービスを提供している事業をケースとして取り上げる。日本の「放課後アフタースクール」は地域資源の活用に注力し,地域社会との協働で成長を遂げている。「森のようちえん全国ネットワーク」は自然教育のコンセプトを共有し,自発的につながることによって,活動の拡大を図っている。中国の「億未来社区児童運動館」は社会的企業としての発展を目指し,「社区」に根差したサービスを展開している。「自然の友ガイア自然学校」は先駆的なNGOである自然の友から脱皮し,社会資本を豊かにしようとしている。「谷雨千千樹」は各地方政府との連携をベースに,活動の範囲を広げている。韓国では,親達の共同意識のもとに,共同育児の「ウリオリニジップ」,本質的な教育を求める「三角山ゼミナン学校」が設立されたが,それを起点に,地域の住民たちが共同でニーズに応えることによって,生協やコミュニティカフェなどの活動がどんどん生まれ,まちづくりとして有名なマウルまで発展している。経済社会を変える力としてソーシャル・イノベーションに期待が寄せられており,可能性を秘めている。一方,ソーシャル・エコシステムの多様化や,社会的企業のフロンティア的な存在からスケールアップとスケールアウトまでの昇華,ソーシャル・イノベーションを引き起こす新たな担い手の育成など,克服すべき課題も多くある。(著者抄録)