抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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食品に含まれるタンパク質は,栄養源としてだけではなく多彩な食品物性・機能を具備している。食品加工において,タンパク質のような高分子化合物が示す特徴的な物性や機能の‘源’は加工時に形成されるナノスケールの凝集体構造にあり,その構造に依存した分子間相互作用により動的性質が発揮されている。したがって,食品の高分子化合物のナノスケールの凝集体構造とその凝集体間の相互作用を解明することにより,食品物性の発現機構が明らかになると考えられる。しかし,不溶性である高分子凝集体のナノ構造は分析手法が限られているため,食品科学分野では未開の領域として取り残されてきた。一方,材料科学の分野では,ソフトマターのナノ構造の解明に固体だけでなく溶液中の粒子構造の分析も可能である量子ビーム(X線および中性子線)を用いる小角散乱法が導入され,物性と構造の相関に関する知見が集積されてきている。食品科学分野でも今後,小角散乱法とさまざまな物性解析とを組み合わせて研究することにより食品物性の発現機構をナノ構造との関係で論じることが可能になると考えられる。本稿では,タンパク質の中で最も古い研究の歴史をもち特徴的な物性を示す代表的な植物性食品タンバク質であるコムギタンパク質グリアジンについて最近筆者らが行った解析を例にとり,量子ビーム小角散乱解析の理論と実施法について紹介する。なお,小角散乱法の解説に加えて,最近筆者らが開発したグリアジンの新しい抽出法についても概説する。(著者抄録)