抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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1。2014年の販売データ,組合員情報,県の漁船登録情報,漁業許可情報に基づき,5トン未満の漁船を使用する沿岸漁業の漁獲金額,操業日数,漁業者の年齢,漁船トン数等のデータで構成された一次データセット(n=667)を作成し,専業状態にない等,ノイズとなる可能性があるデータを除外するため,漁獲金額上位の漁業者から一次データセット全体漁獲金額の90%となる部分までのデータに限定した解析用データセット(n=305)を作成した。一次データセットの合計漁獲金額は,宮崎県漁業生産統計における,対象14漁協の漁獲金額のうち,沿岸漁業によるものの合計漁獲金額の74.3%を占めており,今回解析対象とした漁業の相当な部分を網羅出来ているものと考えられた。解析用データセットの平均漁獲金額は3,846千円であるが,そのうち高漁獲金額の経営体は一部であった。また漁業者の年齢は平均63.8歳で,今後,高齢化が進行していくことが想定される。2。解析対象漁業の地域別の状況は,県中地域の1経営体当たりの漁獲金額が最も高いが,操業日数の多さによって支えられている。県南地域は操業日数が少ない割に漁獲金額が高く,操業当たりの効率が良い,あるいは生産性が高く,一方県北地域は,操業日数は中位だが漁獲金額は低く,操業の効率性,あるいは生産性が低いと考えられた。3。解析対象漁業の年齢別漁獲金額は,漁業技術が熟練し,また装備も充実すると考えられる50~60歳で400万円以上に達し,その後は徐々に減少する。他の陸上産業との比較では,「建設業」や「製造業」の年収と大きな差はなく,また漁業では80歳代まで現役として一定の収入が継続しており,生涯収入では,陸上産業と比較して遜色無いのではないかと考えられる。4。操業形態別には,網漁業を主体とした2種類の複合漁業で操業日当たりの漁獲金額が高い傾向があり,一方,釣漁業を主体とした3種類以上の複合漁業では低い傾向が見られた。5。操業形態を類型化し,類型ごとに操業日数や漁獲金額などを比較したところ,単一操業で9パターン,2種類の複合操業で23パターン,3種類以上の複合操業で24パターンの計56パターンに分類された。また,年間漁獲金額が400万円以上かつ操業当たり漁獲金額が4万円以上である高収益型の操業類型は7パターンで,特徴としては単一操業では「曳縄」が,複合操業では「磯建網」又は「曳縄」を含む操業形態が多かった。6。漁獲金額が高い上位50経営体の操業形態を類型化したところ,15の操業類型に分けられ,年間の操業日数は194日,漁獲金額が8,592,794円,操業当たり漁獲金額が48,304円と,県全体の平均値を大きく上回った。操業類型は「曳縄」と「小型底曳網」が最も多い8経営体,次いで「延縄」,「小型定置網」,「延縄」+「その他」,「延縄」+「曳縄」,「磯建」+「小型定置網」が4経営体以上であった。7。上位50経営体の操業類型別に,「操業日数」,「操業当たり漁獲金額」,「船舶総トン数」,「船齢」,「年齢」を県全体のものと比較したところ,高収益要因は「操業日数」であるものが多いが,「操業当たり漁獲金額」が突出して高い事例も見られ,これらの経営体は,浮魚礁や築いそなどの造成漁場を効率的に利用していることも考えられ,今後の振興策を検討する上で重要なポイントとなると考えられる。(著者抄録)