抄録/ポイント：
抄録/ポイント
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[研究目的]北陸および沖縄地方をはじめとする沿岸域では,海域からの飛来塩分により建設構造物が塩害劣化するため問題となっている。このような問題を解決していくためには,風や波などの自然現象を含めた数値シミュレーションモデルを構築し,数値解析によるコンクリート構造物の劣化予測を実施することが有効である。しかしながら,3次元の数値シミュレーションでは,その入力条件となる構造物およびその周辺地形の数値化,構造物の外部環境データの収集・活用の際に,膨大な労力と時間が消費されるといった問題もある。その一方で,現在導入が進められているCIMでは,構造物の設計・施工および維持管理段階のデータが統合されており,そこに以上のような数値シミュレーションを導入することにより,従来,問題となっていた計算のための入力データの構築作業が大幅に削減でき,解析結果を効率的に活用できるようになる。そこで,コンクリート構造物の維持管理にCIMを応用し,構造物の維持管理を効率化するとともに,それを有効活用していくことが今後の課題である。本研究では,コンクリート構造物の維持管理に応用したCIMの構築を行い,その有効性の検証を行った。さらに,構造物の劣化予測計算に必要な外部環境(気象,波浪)データのCIMへの効率的な入力手法についても検討した。[研究手順]コンクリート構造物に維持管理に応用したCIMの構成,それに利用する数値シミュレーションモデルの構築とその検証を行った。数値モデルは構造物の塩害劣化が再現できる外部環境を考慮した飛来塩分の数値シミュレーションおよび塩分浸透モデルとした。数値モデルの検証は,実橋梁を対象とした現地調査を実施するとともに,既往の調査結果を整理し,計算結果との比較を行った。その後,コンクリート構造物の維持管理にCIMを応用した維持管理システムを構築し,実橋梁の維持管理を想定したシミュレーションを実施し,その有効性について評価を行った。構築した構造物の維持管理システムは,設計・施工段階を対象としたCIMに,構造物の塩害劣化を予測できる数値シミュレーションを導入し,その計算結果を効率的に利用できるような構成とした。さらに,構造物の維持管理に応用したCIMを有効活用するために,構造物の劣化予測の計算条件となる外部環境条件を効率的に取得し,構造物に作用する飛来塩分を算出する手法について検討した。[研究成果]研究結果として,以下の点が示された。・CIMに導入した外部環境・飛来塩分の数値シミュレーションは,現地観測結果を概ね再現できていおり,構造物の維持管理の予測に十分に利用できること。・実橋梁の維持管理を想定したシミュレーションを行った結果から,構築した維持管理システムは,コンクリート構造物の維持管理の効率化に有効であること。・構造物の劣化現象の要因となる外部環境データを自動で取得するシステムを構築することで,システム中に外部環境データを効率的に取得でき,さらに,構造物に作用する塩分量の予測に有効活用できること。[今回の研究の新規性・研究の活用]本研究は,塩害環境下におけるコンクリート構造物の維持管理にCIMを応用する点に新規性がある。特に,コンクリート構造物の劣化予測の数値シミュレーションモデルをCIMに利用する点が新しく独創的である。構造物の設計・施工から維持管理段階までのデータを共有化した効率的な構造物の維持管理技術への発展性がある。(著者抄録)
