抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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紙質文化財の保存においては,通常,原材料以外の物質を除去し,付着物を放出して再付着処理するために,湿式洗浄処理が行われる。このためには,紙の湿り具合を調整して制御することが重要で技術的作業である。特に,損傷した紙の処理の場合,歴史上のアーチファクトが水によって損なわれ,歴史的に重要な情報が失われるリスクがある。天然多糖であるジェランガムの硬質ヒドロゲルは,水が紙に与えるこのような影響を最小限に抑えるために効果的に使用することができる。本研究では,ジェランガムを用いた湿り処理後の紙試料の残留物および劣化促進による影響の分析研究を評価する。カリウム,カルシウム,および酢酸イオンなどの,ジェランガムのゲルによる湿り処理の残留物は,ワットマン紙から検出することができた。ゲルで処理されたワットマン紙および楮紙の両方のpHは,直接湿り処理をした紙のpHよりもわずかに高い傾向がある。しかしながら,ゲル湿り処理の前にゲルを超純水で洗浄すると,ジェランガムゲルに由来する残留物が劇的に減少するか,または検出されない。さらに,洗浄されたゲルで処理した紙のpHは,対照として直接湿り処理した紙とほぼ同じ値を示す。紙を湿り処理する前にジェランガムのゲルを洗浄することは,ゲル由来の残留物を残さないので有効であることが明らかになった。洗浄されていないゲルで処理された紙試料のいくつかの種類は,水熱劣化後のpH,脱色および物理的強度の値に影響を受ける。しかし,紙試料を最初に洗浄ゲルで処理すると,それらの物理的特性は,対照として直接水で処理した紙と同じように変化する。すなわち,洗浄ゲルは,ゲル湿り処理後の紙への悪影響を回避するのに有効である。(翻訳著者抄録)