抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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藻場は,魚類や甲殻類の産卵場,生育場,および餌場としての役割を果たしている。さらに,二酸化炭素の吸収と分離の役割も持っている。しかしながら,最近では,「磯焼け」として知られる現象である藻場の破壊がますます問題になっている。藻場は多くの因子で破壊されるが,水温が最も被害が大きい。藻場の植物相は,わずか0.5~1°C水温上昇で顕著に変化する。藻場の個体群に及ぼす水温の影響は2つの流れで進む:高水温が夏の海藻の生長を阻害し,その高水温が原因で冬に藻類食性の魚類が活発になる。20年前と比較すると,黒潮により海洋の海域が影響を受けており,そこでは藻場やホンダワラ属の温帯種が減少し,亜熱帯種の海藻が北上している。藻場の分布は将来の環境変化でいかに影響を受けるのだろうか? IPCCによって公表された地球温暖化シナリオでは,温室効果ガスの放出を最小にするRCP2.6と,最大にガスを放出するRCP8.5の2つがある。本研究のモデルを用いた計算によると,今後の50~100年間で海水温の上昇により温帯産海藻類は減少するが,RCP2.6のシナリオでは藻場は生残するであろう。さらに,海水温の上昇はワカメ Undaria pinnatifidaやアマノリ属の種の養殖に影響を及ぼす。この海水温の上昇の問題点を考慮すれば,ヒジキ Sargassum fusiformeやトサカノリ Meristotheca papuloseなどの種を利用した水産養殖や,高水温に耐性のある海藻類の開発に重点を置いた研究が求められる。気候変動による温度や海水温の上昇は避けることができない。したがって,地球温暖化への対策だけでなく,変化への適応を可能にする対策も考慮しなければならない。(翻訳著者抄録)