抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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目的:飛跡構造シミュレーションコードは,DNA鎖切断および塩基損傷のような生物学的細胞における放射線損傷を定量的に評価するために,粒子-物質相互作用の確率的性質を正確に再現することができる。このようなシミュレーションは,照射媒体中で生成した多数の二次荷電粒子と分子種を扱う。すべての粒子と分子種は,高い空間精度で細胞核内の分子種のエネルギー損失パターンと空間分布を計算するためにモンテカルロ法を用いて段階毎に追跡される。Geant4汎用モンテカルロシミュレーションツールキットのGeant4-DNA拡張は,そのようなトラック構造シミュレーションを可能にし,CPU上で実行できる。しかし,細胞におけるDNA損傷のシミュレーションには長い実行時間が観察されている。本研究では,グラフィカル処理ユニット(GPU)上での超並列処理を用いたそのようなシミュレーションの計算性能の改善について述べた。方法:GPUを用いて高い計算性能を可能にする,MPEXS-DNAと名付けた新しいモンテカルロシミュレータを,細胞内スケールでの飛跡構造と放射線分解シミュレーションのために開発した。MPEXS-DNA物理学と化学プロセスは,Geant4版10.02p03で利用可能なGeant4-DNAプロセスに基づいている。CUDA言語を用いることにより,物理段階(荷電粒子の電磁過程)と化学段階(分子種に対する拡散と化学反応)のGeant4-DNAプロセスコードを再実装した。MPEXS-DNAは,荷電粒子によって引き起こされた照射媒体中のエネルギー損失の分布を計算することができ,また,DNAへの初期損傷を定量的に評価するために,水放射線分解からの分子種の生成,拡散,および化学的相互作用をシミュレートすることができる。MPEXS-DNA物理学と化学シミュレーションの検証は,物理段階に対する動径線量分布,化学段階に対するG値分布,およびPARTRACを含む他のシミュレーションコードにより得られた既存の実験データとシミュレーション結果に対する各化学製品に対するG値プロファイルとそれらの線形エネルギー移動依存性を比較することにより行った。【結果】物理学的検証のために,MPEXS-DNAによって計算した放射線線量分布は実験データおよび数値シミュレーションと一致した。化学的検証のために,MPEXS-DNAは,既存の実験データと同じ傾向で,各分子種に対するG値プロファイルも再現できた。MPEXS-DNAはPARTRACによるシミュレーションとも良く一致した。しかし,実験データおよびPARTRACシミュレーションと比較して,H_2およびH_2O_2のような分子種に対して,MPEXS-DNAによって計算されたG値プロファイルにわずかな差異があることを確認した。MPEXS-DNAとPARTRACの間のG値プロファイルの違いは,考慮した異なる化学反応によって引き起こされた。MPEXS-DNAは,トラック構造と放射線分解シミュレーションの計算性能を劇的に上げることができる。Voltaアーキテクチャを採用したNVIDIAのGPUデバイスを用いることにより,MPEXS-DNAは,単一CPUコアを用いたGeant4-DNAシミュレーションに対して最大2900までの高速化因子を達成した。結論:MPEXS-DNAモンテカルロシミュレーションは,Geant4-DNAおよびPARTRACなどの他のコードを用いて行ったモンテカルロシミュレーションと類似の精度を達成し,その予測は実験データと一致した。特に,MPEXS-DNAはCPUを用いた従来のシミュレーションよりも最大で2900倍速い計算を可能にした。Copyright 2019 Wiley Publishing Japan K.K. All rights reserved. Translated from English into Japanese by JST.【JST・京大機械翻訳】