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J-GLOBAL ID:201902261044428673   整理番号:19A0772472

スピン流とそのゆらぎ

Fluctuations of Spin Current
著者 (2件):
資料名:
巻: 74  号:ページ: 222-227  発行年: 2019年04月05日 
JST資料番号: F0221A  ISSN: 0029-0181  CODEN: NBGSA  資料種別: 逐次刊行物 (A)
記事区分: 解説  発行国: 日本 (JPN)  言語: 日本語 (JA)
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物質中を電気が流れる,という現象は,私たちにとって,もっとも馴染み深い物理現象の一つである.それでは実際には,電流はどのように物質中を流れるのだろうか? もちろん,このような電流の正体は,電子などの電荷を持った粒子の流れである.しかしながら,通常,私たちは電流を連続量と考え,粒子流であることを意識しないことも多い.マクスウェルの方程式の中でも,電流は連続量である.それでは,電流が粒子流であることをどうやって実験的に検出すれば良いのだろうか? 100年ほど前の1918年,W.ショットキーは真空管内を流れる電流がどのような「ゆらぎ(雑音)」を持っているかを考察した.彼は電流ゆらぎのスペクトル密度が素電荷と電流の平均値の積の形で書けることを見出した.このゆらぎは,真空管の陰極から電子が一粒ずつランダムに放出されるという確率過程に起因するもので,ショット雑音と呼ばれる(「ショット」とは「粒」のことである).通常,電流は電荷の連続的な流れとして取り扱われる.しかし,そのゆらぎであるショット雑音には,電子の粒子性が直接にあらわれてくるのである.私たちは,このように,電流ゆらぎが電流とは異なる情報を与えることに注目し,研究を行ってきた.ショットキーの議論をもう一歩,進めてみよう.電子は電荷だけでなくスピンという自由度も持つ.したがって,電荷の離散性だけではなく,スピンの離散性も電流のゆらぎに影響を与えるのではないかと考えるのは自然である.近年,スピントロニクスの分野では,スピン角運動量の流れであるスピン流とそれにまつわる物理現象が盛んに研究されている.スピン流もショット雑音を示すのだろうか? スピン流のゆらぎについては,多数の理論的な提案があるものの,実験的な検証は行われてこなかった.最近,私たちは,磁性体/絶縁体/常磁性体からなるトンネル接合において,スピン流に伴うショット雑音(スピンショット雑音)の検出に成功した.具体的には,強磁性半導体(Ga,Mn)Asと非磁性半導体GaAsからなるトンネル接合に電圧とスピン蓄積を印加し,電流のゆらぎを測定した.電圧は電荷の流れを駆動し(図(a)),スピン蓄積はスピンの流れを駆動(図(b))する.それらの値を独立に制御し,系統的な実験を行うことで,スピン流によるショット雑音の検出に成功し,両者の比例関係を実証した.この結果は,トンネル過程において電荷とスピンが一体となってトンネルしていることの直接的な帰結である.また,メゾスコピック系における量子輸送理論がスピン流に適用可能であることを明確に示す結果でもある.これまで,ショット雑音は,メゾスコピック系の物理の発展に大きく貢献してきた.今回新たに実証されたスピンショット雑音は,スピン軌道相互作用や不純物によるスピン散乱,伝導電子と局在スピン間のスピンモーメントの輸送(スピントランスファー効果),トポロジカル絶縁体におけるカイラルエッジ状態の研究などにおいても,有用なプローブとなるものと期待される.(著者抄録)
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分類 (2件):
分類
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その他の無機化合物の磁性  ,  半導体結晶の電気伝導 
引用文献 (18件):
  • 1) 川畑有郷,『メゾスコピック系の物理学』(培風館,1997).
  • 2) 勝本信吾,『メゾスコピック系』(朝倉書店,2003).
  • 3) W. Schottky, Ann. der Phys. 362, 541(1918).
  • 4) Y. M. Blanter and M. Buttiker, Phys. Rep. 336, 1(2000).
  • 5) K. Kobayashi, Proc. Jpn. Acad., Ser. B 92, 204(2016).
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