抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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秦ほか(2015)は,和歌山県串本町の津波来襲地域において,南海トラフ巨大地震による強震動評価を行うことを将来の目的として,高密度の常時微動観測を実施し,その水平動/上下動スペクトル比(H/V)を用いて地盤震動特性の評価を試みた。この既往調査の筆頭著者に対して,研究活動上の特定不正行為に関する調査結果(大阪大学,2019)が公表されたが,既往調査における特定不正行為の有無についての判定を留保としたため,記載内容の信頼性について判定されないままとなった。和歌山県串本町において改めて357点の高密度常時微動観測を実施し,秦ほか(2015)の既往調査と同様の検討を行うことで,既往調査による結果の検証を行った。常時微動H/Vに関して,既往調査と本調査のピーク周波数分布は定性的によく対応していると判断できた。一方で,特定エリアのピーク周波数に系統的な違いが見られた。観測位置の違いや交通量の違いなどの要因は考えられるが,この原因は既往調査の側にあったのではないかと考えざるを得ない。K-NET串本の常時微動H/Vを基準として他の地点の常時微動H/Vのピーク周波数およびピーク振幅の違いを説明できるように,K-NET串本のサイト増幅特性を補正して,算定したサイト増幅特性に関して,既往調査と本調査の一致度は良くなかった。基準としたK-NET串本の常時微動H/Vの形状が異なること,既往調査の地盤モデルやRayleigh 波基本モードの理論楕円率が正確に記述されていなかったことなどが要因である可能性が考えられる。地震観測に関して,一般的に地震観測記録を用いたサイト増幅特性と常時微動H/Vに基づいて評価したサイト増幅特性が既往調査に示されているように似た形状になることは珍しいことを指摘した。なお,著者らは,研究者や実務者等からの要請があれば,本稿で示した解析に用いたwin形式の生データを提供することが可能である。(著者抄録)