抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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東京電力(以下,東電)の福島第一原子力発電所(以下,福島第一原発)は1966年から敷地の造成が始まり,1971年に1号機が営業運転を開始した原発で,2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震発生時には1号機から6号機までが設置されていた.この地震と津波によりすべての号機で電源が喪失し,1~3号機では炉心溶融(メルトダウン)が発生し,1,3,4号機で水素爆発が発生した.同年3月下旬には建屋地下や立坑の溜まり水から高濃度の放射線が検出され,4月2日には立坑の亀裂から高濃度の放射性物質による汚染水が海に流出していることが発見された.さらに東電は4月4~10日に汚染水の海洋放出を行った.その後,汚染水は地上のタンクや地下貯水槽に保管されるようになったが,2013年になると地下貯水槽から汚染水が漏洩したり地下水観測孔から放射性物質が検出されたりし,同年7月には放射性物質で汚染された地下水が海に流出していることが判明した.同年8月には汚染水タンクから高濃度の汚染水が約300m
3漏洩する事故も発生した.このように2013年から汚染水問題がさまざまな形で顕在化し,地質や地下水の専門的知見が求められるようになった.本論文著者の一人柴崎は2013年9月に福島県廃炉安全監視協議会の専門委員(水文地質学)に任命され,福島県の要請により福島第一原発の現地調査を実施するとともに,汚染水問題に関する検討や東電への質疑を行った.この頃から地学団体研究会(地団研)や応用地質研究会(応地研)のメンバーもこの汚染水問題に大きな関心をもつようになった。日本科学者会議が立ち上げた原発汚染水問題プロジェクトチームにこうしたメンバーが参画し,東電や国が公表する資料を分析し,2014年2月に原発汚染水問題にかかわる緊急提言を発表した.地団研の中でも原発汚染水問題にどう取り組むかが検討され,2015年2月に「福島第一原発地質・地下水問題団体研究グループ」(略称:原発団研)が発足した.この団研では,地団研の特徴である「団体研究」の方法を取り入れて,地質や地下水の専門的な立場から公表された資料をチェック・監視し,問題点を整理し提言等を行うとともに,周辺地域の現地調査も行い,放射能による汚染水問題の検討と解決のために取り組んでいくことにした.2021年4月時点で,原発団研には46名のメンバーが所属している.原発団研の活動スタイルは,(1)団研学習会,(2)現地調査,(3)室内団研,(4)メールによる情報交換,そして(5)専門別グループの活動で特徴づけられる.とくに,毎年春と秋の2回,団研学習会と現地調査をセットにして行っており,福島大学の大学院生や学生を含めて毎回30名程度が参加している.2020年春からは新型コロナウイルス感染症拡大の影響で対面式の活動や現地調査はできなかったが,Web会議方式で研究成果をとりまとめた.原発団研の成果は,地団研総会でのポスター発表や講演,団研メンバーによる論文や報告書の公表,さらには国際学会での発表など多岐にわたる.(著者抄録)