抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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東日本大震災から5年が経過し,原発災害の影響を受けた福島県川内村でも除染作業によるリスク低減やインフラ整備がすすみ,雇用の場も確保されつつあり,避難生活を経て帰村した人々が生活の再建に取りかかっている。しかし,低線量被爆が人体や環境に及ぼす影響の評価は専門家の間で見解の相違があり,帰村者は安全と認められる空間線量下においても生活不安を抱き続けている。2015年に川内村で広報された226種類の食品検査の結果のうち,田畑で生産されている穀物や野菜類は食品基準値をクリアしているものが圧倒的多数であったが,85種類のヤマの恵み,特にきのこや山菜は放射性物質による内部被爆の危険性が比較的高いことが明らかになった。本報では,東日本大震災による川内村の被害,食生活をめぐる課題と現状について概説し,きのこ,山菜,鳥獣等のヤマの恵みの利用に関する文化論的な聞き取り調査の結果を報告した。住民の中には,ヤマとの関わりを断ち,自給食材を排除使用とする人々,食べないながらもヤマの維持のため見回る人々,家庭内で食べ物を共有せず高齢者だけに限りヤマの恵みを利用する人々等が認められ,断つことはストレス,採取することは健康被害や不安につながっていた。ヤマの汚染は有効な手立てがなく,政策的対応から漏れ落ちている。山村で豊かなヤマの恵みを得る活動を生きがいとしてきた人々はリスクの自己管理を迫られており,政策的な対応が望まれる。