抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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最近の研究により,火葬されて有機成分が残存していない骨に対し,骨の無機成分である炭酸ヒドロキシアパタイト(Carbonate Hydroxyapatite:CHa)を用いた
14C年代測定の有効性が実証された(Lanting et al.,2001;Zazzo et al.,2011)。CHaは,高温(>600°C)で加熱されると結晶化が進み埋没後に続成作用の影響を受けにくくなることがその理由として挙げられる。そのため,結晶性の高いCHaを含む火葬骨は,生体由来の化学成分を保持でき,栄養段階の指標であるSr/Ca値やδ
88Sr値などを分析することにより,
14C年代だけでなく食性に関する情報も復元できることが期待できる。そこで,本研究では,仏教徒「貞慶」(AD 1155-1213)の遺骨とされる火葬骨のSr/Ca値及びδ
88Sr値の分析を行い,貞慶が菜食であったことを実証できるかどうかを検討した。結晶性の高い火葬骨のCHaから得られた
14C年代値は貞慶の没年(1213年)と矛盾しない結果であった。さらに,log(Sr/Ca)値は-2.79,δ
88Sr値は-0.14~-0.13であり,いずれも草食動物の値(log(Sr/Ca)=-3.0~-2.5;Balter et al.,2002,δ
88Sr値=-0.47~-0.13;Tuetken et al.,2015))の範囲であった。この結果は,貞慶が菜食主義であったことを示すものであり,考古学的な見解と一致している。これらの結果から,高温で加熱され,結晶性が高い火葬骨CHaは,生体由来のSr/Ca値及びδ
88Sr値を保持しており,年代に関する情報だけでなく生前の食習慣を探るのにも有効であることが明らかになった。(著者抄録)