抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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情報通信技術関連機器のエネルギー消費は年々増大し,深刻な状況になりつつある.科学技術振興機構低炭素社会戦略センターの試算によると,日本/世界の情報通信技術関連機器のエネルギー消費量は,2016年の41/1,170 TWhから,2030年には1,480/42,300 TWhにまで増大すると予測される.2020年の全世界のエネルギー消費量が約26,000 TWhであることを考えると,情報通信技術のエネルギー消費問題がいかに顕著で喫緊であるかがわかる.この問題に対応するため,デバイスの省エネルギー化,ネットワークの効率化,新たな原理の素子の開発など,多方面からの取り組みが行われている.なかでも,低消費電力・高記録密度・不揮発性の次世代メモリデバイスの開発は,エネルギー消費の大幅な低減をもたらすと考えられ,世界中で重点的に研究が進められている.こうした観点から注目されるのが,マルチフェロイック物質である.我々の研究グループは,菱面体晶ペロブスカイトのビスマスフェライト(BiFeO
3)のFeサイトにCoを一部置換したBiFe
1-x Co
x O
3において,電場印加で磁化を反転する結果を得た.現行で使用されているHDD(Hard Disk Drive)やMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)等の磁気メモリは書き込みのためにコイルに電流を流して磁場を発生するため,電力消費が本質的に避けられない.また,近年研究が進展している,電子スピンの自由度を活用するスピントロニクスメモリにおいても,情報の書き込みにはスピン偏極した電流を生成する必要がある.一方で,強磁性と強誘電性を併せ持つマルチフェロイック物質で,磁化と電気分極の相関が十分に強く,電気分極の反転に伴って磁化を反転することが可能ならば,電場書き込み・磁気読み出し(電圧駆動)のメモリ動作を実現できる.このメモリの電場印加による情報書き込み過程には,分極反転電流以外の電流による電力消費を伴わないので,超低消費電力メモリとしての可能性が期待される.このアイデアは,世界的に展開されているマルチフェロイクス材料研究の一つの大きな目標とされており,基礎研究の段階では,これまでDy
0.75Gd
0.25FeO
3などいくつかの物質で実験的に達成されている.しかしながら,これらの物質では強磁性と強誘電性のいずれかが-200°C以下の低温でしか現れないため,実用材料として見なすことは難しい.一方BiFe
1-x Co
xO
3では,弱強磁性と強誘電性が室温で共存し,この弱強磁性の出現がスピン構造変化に由来した本質的なものであることを明らかにしてきた.また,BiFe
0.9Co
0.1O
3のエピタキシャル薄膜においても上記のスピン構造変化による弱強磁性の存在を確認したうえで,同一視野における強誘電ドメイン・強磁性ドメインを観測し,室温で電場印加によって電気分極を反転させた際に,磁化の方向が反転することが実験的に確かめられた.この特性を生かせば,不揮発性・高安定性という現在の磁気メモリの特徴を生かしつつ,電場書き込み磁気読み出しのメモリデバイスを実現できるのではと期待される.(著者抄録)