抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本研究では,輸送障害による被害の程度を旅客の経済損失の観点から評価するために,輸送障害に遭遇した旅客の不効用をモデル化し,経済損失を定量化することで,その評価法(評価指標)を確立することを目的とした。本研究で得た知見と考察を集約すると次の通りである。1)輸送障害による被害の程度を旅客の経済損失の観点から評価する手法として,輸送障害遭遇時の時間評価値と,乗車中もしくは乗車予定の全旅客が待たされた総影響時間との積で算出される総損失額で示す経済損失の評価指標を提案した。2)輸送障害に遭遇した旅客が経路迂回するか,運転再開まで待つかの行動選択モデルに,迂回運賃の概念を加え,時間と運賃のパラメータ比で計算する選好接近法を用いて,京阪神圏の鉄道旅客における輸送障害時の時間評価値を全時間帯平均で30.8円/分と算出した。3)平常運転時と輸送障害時の時間評価値はほば同等との分析結果を得た。ただし,公共交通機関を用いた迂回行動のみを分析対象とした場合の算出値であることに留意する必要がある。4)バーソントリップ調査などのデータを用いて,半休日時間帯別の時間評価値を推定した。これにより,輸送障害で列車運行に影響が及んだ時間帯毎に異なる評価値を用いることで,より精微に総損失額を算出することができる。5)ある路線で発生した人身事故の影響で列車の運休が数十本に及ぶような輸送障害例において総損失額を試算したところ,その総額は数千万円にのぼることが判明した。本研究で提案した評価指標は,”お客様にどの程度迷惑をかけたか”という輸送障害の規模を示す指標として用いるほか,例えば,輸送障害対策として施工する設備投資の判断などに活用できると考えられる。