抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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互いの化学的性質が非常に似ている同位体は,化学反応や物質の期限・移動を解明するトレーサとして有効であり,広範囲の科学分野の研究に利用される。しかし,物質中の微細な同位体の組成分布を観察できる同位体顕微鏡は現在でも一般的でない。ほとんどの元素は1つの同位体のみの存在度が卓越し他同位体存在度が極めて小さく,化学的性質が似ているため天然の同位体変動は化学反応にて%オーダ以下と極少である。従って同位体顕微鏡実現のための要件は,高感度計測,高ダイナミックレンジ計測,高精度計測を同時に満足することである。現在上記要件を満たす同位体分析法2次イオン質量分析法SIMSを適用したサブミクロン分解能を持つ同位体顕微鏡が開発され,質量分析においても有用な顕微鏡の一つとなりつつある。これにより地球化学においても固体中の組織と同位体・微量元素分布との対応を問題解決の重要情報源と位置付けでき,この同位体で見る固体組織をアイソトポグラフィ(同位体組織学)と命名した。アイソトポグラフィは,隕石中の金属元素と酸素同位体のパラドックスを解消しつつあり,結果として原始太陽系星雲における酸素同位体比が異なる2種の気相の存在を明らかにした。太陽系起源論は従来の静的なものからダイナミックのものへと転換し始めたなど,太陽系起原研究のフロンティアを広げつつある。ここでは,同位体顕微鏡の原理,及び「火星の水」とプレソーラ粒子を例に挙げ,隕石組織観察による新イメージ,惑星科学的ブレークスルーの発生について紹介した。