抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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雷雨は対流セルあるいは降水セルと呼ばれる秒速十数メートルの激しい上昇・下降気流の集合体で構成される。この中で,発達期のあられなどの粒子が雲内で氷晶と接触し,電荷分離が進行して電荷が蓄積され絶縁破壊強度を越えたとき放電により雲内の電荷が中和される。これを雷放電現象と呼ぶ。しかし,雷放電については,基本的な性質についてさえ,未解明な部分が多い。そこで本稿では,雷放電と積乱雲の観測技術とその科学に関して,最新の研究動向を紹介する。特に,情報通信技術の進歩によって,雷放電および積乱雲をこれまで以上の分解能で観測することにより,その新たな機構と過程を発掘する試み(著者らが提唱する,小型レーダネットワークによるアプローチ)について紹介した。本レーダネットワークは,Ku帯を利用し,80MHzという従来の数十倍の帯域を確保している。これにより空間分解能は10メートル以下となり,積乱雲の構造を高分解能で観測出来る。雷放電の放射する電磁波からVHF帯を用いて,雷放電路の再現を試みた。数m離れたアンテナ間の位相差を計測し(広帯域干渉計),フーリエ変換により到来電磁波の仰角と方位角を算出する。観測結果から,積乱雲の方向にレーダ反射因子の大きな領域が存在し,その近辺に雷放電が生起していることがわかった。そして,広帯域干渉計により標定される点が地面に向けて進展していることから,この放電が対地放電であることが示される。放電開始高度は約6kmである。一方,積乱雲の構造に着目すると,この放電は積乱雲のコア近辺にあるエコーの強い領域の上方から開始している。コアにはさらに細かな構造が示されており,詳しく解析することにより,積乱雲の詳細構造と雷放電の対応関係が明確になり,雷放電過程の微細な構造を捉えることが可能になる。さらにこの進展過程は積乱雲の電荷構造と密接に関連しており,積乱雲の電荷構造は,雲粒子の電荷分離機構と積乱雲生成の熱的および力学的過程によって決定されるため,降雨構造を詳細に捉えることの出来る小型レーダネットワークによる観測データと同期観測することよって,積乱雲の構造とその変化を電荷構造および降水構造の両側面から詳細に観測出来る。このような観測を通じて,積乱雲の電荷分布とその変化,電荷分離メカニズムの解明,雷予知の可能性さらには,新たな現象の発見にもつながると思われる。