抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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成層圏における大気成分の重力分離を調べるため,北極航空機観測計画(AAMP02)において採取した大気試料の酸素・窒素比(δ(O<sub>2</sub>/N<sub>2</sub>)),窒素と酸素の安定同位体比(δ<sup>15</sup>N,δ<sup>18</sup>O),およびアルゴン・窒素比(δ(Ar/N<sub>2</sub>))を分析した。AAPM02において観測されたスバールバル諸島およびバロー上空の成層圏のδ<sup>15</sup>N,δ<sup>18</sup>Oおよびδ(Ar/N<sub>2</sub>)の関係は質量依存型の同位体分別を示しており,極渦内の成層圏最下部で大気主成分の重力分離が検出可能であることを示唆している。また,δ(O<sub>2</sub>/N<sub>2</sub>)と二酸化炭素(CO<sub>2</sub>)濃度およびその安定炭素同位体比(δ<sup>13</sup>C)との関係からは,対流圏での高度分布が地表での季節変化の上方伝搬によって形成され,成層圏での高度分布が鉛直方向の空気塊の年代差に加えて,重力分離の影響を受けて形成されていることが示唆された。南極昭和基地上空,スウェーデン・キルナ上空および日本三陸上空において,大気球を用いたクライオジェニックサンプリングによって採取した,中部成層圏大気試料のδ<sup>15</sup>Nおよびδ<sup>18</sup>Oの分析から,重力分離は場所によって異なる高度分布を示し,その程度は極渦内で観測が行われたキルナ上空で最も大きいことが明らかとなった。このことから,重力分離の観測は成層圏における空気塊の鉛直輸送に関する情報をもたらす可能性が示唆される。重力分離,空気塊の平均年代および一酸化二窒素(N<sub>2</sub>O)濃度の関係から,N<sub>2</sub>O>125ppbvおよびN<sub>2</sub>O<45ppbvの領域では,空気塊の沈降の影響がキルナ上空で最大,三陸上空で最小であること,45ppbv<N20<125ppbvの領域では空気塊の鉛直混合が生じていることがそれぞれ示唆される。(著者抄録)